著者:竹中 治堅
中央公論新社(2010-05)
販売元:Amazon.co.jp
★★★★☆
民主党政権が連立工作に失敗し、予算関連法案が否決される見通しが出てきた。首相退陣論が党内にも出る一方、首相は解散・総選挙をちらつかせて反撃し、政治はほとんど脳死状態だ。この原因が衆参の「ねじれ」にあることから、参議院とは何かが改めて問われている。本書は昨年の参院選の前の本だが、この問題を考える参考になるので紹介しておこう。
参議院不要論は昔からあるが、かつての論拠は衆議院のカーボンコピーだからというものだった。しかし最近では、ねじれを引き起こす強い参議院が問題とされる。本書はこの二つの見方を検証する形で終戦直後から現在に至る参議院をめぐる多くの問題を検討しているが、著者の結論は後者である。
吉田内閣のころには自由党が参議院で過半数をもっていなかったため、たびたび法案の修正を強いられ、参議院は「内閣の鬼門」と呼ばれた。保守合同のあと80年代までは「カーボンコピー」の時代が続くが、自民党の中でも参議院は独自性を発揮し、その主張(特に業界団体の既得権)を反映して法案があらかじめ修正されることが多かった。
1989年の参議院選挙で社会党が圧勝したあと自民党は過半数を失い、政治の混乱が続く。これを解消したのが小泉内閣で、郵政選挙で与党は衆議院の2/3を取ったが、それでも参議院のドン、青木幹雄氏は強い発言力をもっていた。そのあとの安倍・福田・麻生内閣がそれなりに安定していたのは2/3があったためだが、それも民主党政権では失われ、参議院が強い拒否権をもつ結果になった。
参議院は、衆議院を牽制して多様な民意を反映するという本来の意味より、政争を複雑にして既得権を強める役割を果たしてきた。これを改めるには、憲法を改正して衆議院が法案採決でも優越するように変える必要があるが、それはきわめて困難なので、公職選挙法の改正で実害を減らすことが現実的だろう。
著者は参議院の選挙区をブロック別の大選挙区にして、比例代表を廃止することを提案しているが、これではねじれが解消する保証がない。私は衆参同日選挙を制度化するように提言したが、同様の制度はアメリカやイタリアなどにもある。いずれにせよ参議院の改革は、迷走する政治を建て直す上で最優先の課題である。
コメント
「第二院が第一院と同じ議決をするなら、それは不要である。違う議決をするなら、それは有害である」(シエイエス)
カーボンコピーでも不要だし、ねじれがおきれば、なお不要。こんなものを放置していては、政治改革などできません。
日本の失われた20年イコール参議院。
こんな感じですね。
今、衆議院を解散して自公で3分の2を取れば自公が政権を取り法案が通るのかもしれないけど、個人的にはやだな~
ここまで国の借金を増やしたのは誰なの?
そして、無策だったのは誰?
言っちゃ悪いが二世議員ばかりでお年よりばかりの自民党は私的には期待出来ないし応援できない。
この借金だらけを作った自民党が政争ばかりで、こんな奴らは応援できない。
もちろん、現政権にも不安はあります。
小沢に足を引っ張られている不運もあろうが、国家国民の為の政治をやれば良い。
二院制があるかぎり、政権交代のたびに私怨が残り、国会が政争の場として続きそう。
一院制で任期を二年と短くするのも手と思います。
素人意見で申し訳ないありませんが、少しコメントさせてください。
参議院を廃止して、衆議院議員を二つにわけます。解散総選挙となった場合、選挙日が古い方が、解散して議席分投票されます。新しい方は解散されずそのままです。
そうすると、長期的な民意も反映されますし、短期的な民意も反映されると思います。一院しかないのですぐに法律の可否が決まり、良い事が多いような気がします。
政治の事は良く分かりませんが、今ほど解散が多いと選挙コスト的にも法案にもデメリットが多い気がします。誰か専門家や政治家が動いてくださると嬉しいです。
もともと貴族院であった参議院は、存在意義自体が怪しいままで今日まで来ました。原則、解散がなく任期が6年で半数ずつ改選の意味もよくわかりません。「良識の府」の呼び名は後付けでしかありません。
どのみち衆参どちらも民意を反映していますので、参院は廃止の方がよいと考えます。喫緊の問題山積でスピーディさが必要な場面では法案可決の遅さに絶望的な気持ちになります。
もともと小選挙区も英国を手本にしたそうですが、党を選ぶ選挙のはずが現実は小選挙区では個人名を書いている矛盾があります。この際はやはり欧州の趨勢をにらみ完全比例制度の衆院のみで良いと考えます。