なぜ「入試・就職・人口減少(広義で結婚)」に関するテーマが関心高いのか?

石川 貴善

アゴラでは色々なテーマを扱っていますが、過去の内容を振り返りますと「入試・就職・少子高齢化と人口減少(移民に加えて婚外子の少ない日本では、広義で結婚と関わりが強いため、必然的に結婚が入ります)」に関する内容の投稿やコメントが多い状況となっています。これらはある意味で、日本の社会システムの特徴と課題が凝縮されているものと言えますが、共通している内容は下記の点が挙げられます。


1)社会的な意味合いとして崩れかけていても、日本社会で依然として「入試・就職・結婚」が人生の一大転機になっている。
2)同様に入試・就職・結婚が、明治期以降の近代化の中から、社会階層が変化する大きな位置づけになっており、後の段階で挽回する機会はぐっと大変になる。
3)三者とも、本来はスタートラインにもかかわらず「その後に何かをする」より「肩書きやその事実」のほうが優先されやすい。
4)三者とも社会的な通過儀礼となっており、色々と矛盾や課題があっても乗り越えてこそ一人前といった価値観が、世代に関係なく未だ根強い。
5)現代社会で噴出する課題に対し、社会または個人の考えが変化に合わせるより硬直化している面が否めない。
6)競争が激しい場合、本来であれば差別化できるニッチに行くものの、日本では知名度やブランド・周りの世間体などから、あえて激しい競争の中に入ることが好まれやすい。

例えば3)に関しては、官公庁や伝統的な大企業などの管理職の挨拶など使われる「大過なく」といった用語が典型的でもあります。
また5)に関しては例えば海外の大学出身・海外での就業・また就職活動がうまく行かなくても、たまたま入り込んだ会社でのステップアップのほか・転職・起業などそのルートは実質的に多岐に及んでいますが、依然として有名大学への入試や新卒一括採用のほうが好まれる傾向です。
6)に関しては、依然として少しでもチャンスがある以上、「記念受験・記念応募」で挑んだほうがメリットあるのは否めません。

その根底には三者とも同じく、「予定調和」としてのロールモデルが想定され、その後起こるであろうハードルを可能な限りクリアした“争いのない平穏な生き方”が前提となっていることが大きいでしょう。本来入試・就職・結婚全てがスタートラインですが、スタートと同時にゴールがセットされ、そのゴールに無事平穏に至ることが良いという考えが強いことが、矛盾の原点になっているのではないでしょうか。

しかし現実を見ますと、大学入試では学力低下に伴うフィルタリング効果が薄れていますし、新卒一括採用は景気低迷による業績悪化のため、分母となる採用減に加えて海外現地法人や留学生の採用などで難しい状況になっています。また少子化の一因でもある結婚数も減少し、35歳未満男性の半分近くが未婚となっているなど、制度としてのきしみと限界が見えていることは言うまでもありません。

予定調和や過去のロールモデル自体が崩れていることから、進路や人生設計など個々人の抱える環境や状況などによって、すでに個人ごとに生き方が全く異なっていることを受け入れる段階に来ているものと考えます。