議論されない日本の安全保障

山口 巌

リビア動乱に対するBBCCNNの論調の変化に注目している。

カダフィ大佐批判は共通しているが、BBCが淡々と状況の変化を伝える事に徹しているのに対し、CNNは問題解決の為に軍事力の行使も止むを得ないとの如き、やや過激なものに思える。

一方、当初、明確にカダフィ大佐を非難していたオバマ大統領やクリントン国務長官も、具体的にどうやって問題を解決するつもりなのか具体的なイメージを出すに至っていない。最も効果的と思われる飛行禁止区域の設定も腰砕けになったようだ。

嘗て世界の警察であったアメリカに、一体何が起こっているのだろうか?

野口雅彦氏はブログで下記の様に説明されている。

かっての米国であればそのような外交的な発言と合わせて、国際会議の開催や、調査団の派遣から始まって、最終的には米軍または第3国軍の派遣、はては軍事力の行使等、米国の眼から見てあるべき姿にするには何をすればよいかを検討し、同盟国と協議し、そう言ったニュースを背景に圧力をかけつつ、米国の考える方向に誘導して行ったと思います。

飽く迄推測であるが、アメリカはアフガニスタン、イラクと続く軍事進攻、サブプライムローン焦げ付きに端を発した経済危機により、これ以上世界の警察として働き続ける経済基盤を喪失したのではないだろうか?

安全保障の基軸を日米同盟に置く日本も今後の安全保障の再設計を考える時期に来ているのではないだろうか。

北方4島に就いては、ロシアの大統領訪問が昨年成され、今後近代兵器の装備が予定されていると聞いている。

尖閣列島に就いても、中国は主権を強行に主張しており今後軍事的圧力を強める事確実だ

軍事的に好ましくない、北のロシアと南の中国と言う両大国に挟撃された形ではないのか?

この様な厳しい状況下、日本はどうやって国を守って行けば良いのだろうか。

どうも最近の日本は、こういった中々正解を見つける事の難しい問題を考え続けるのを止め、身近でちっちゃな京都大学のカンニング問題とか、前原外務大臣のたった20万円の政治献金といった些細な話に、政治、マスコミそして国民が注意を払い過ぎてる様に思う。同時に、大事な問題に対する思考停止を危惧する。

日本の残された道は少ないと言うよりも、当面は規定路線をしっかり継続するしか、現実的にはないのではないか?

アメリカ海兵隊のガム移転もアメリカの財政状態からして無期延期の様な気がするが。

規定路線を継続していく上で、沖縄、普天間基地移転問題はのど元に刺さったトゲである。

内輪揉めを繰り返す菅政権に具体的な問題解決の青写真があるとはとても思えない。アメリカも呆れ果てると共に深く失望しているに違いない。日本国民が理解せねばならない事は、この問題は対米問題と言うよりも日本の安全保障の問題であると言う事である。

来年3月で沖縄振興特別措置法が期限切れを迎える。これは1972年の本土復帰以来10年ごとに延長を繰り返し今に至っている。

これからの沖縄の10年の為に、そして、現実的な施策としては超大型の沖縄経済振興政策と引き換えに沖縄県民に普天間基地移転を受け入れてもらうのが、結果日本の安全保障と沖縄県民の将来の為のベストな選択ではないだろうか。

小出しにプランを出しては、鬱積した沖縄県民の恨み辛みの火に油を注ぐ事になるのは確実だ。第一回目の提案で驚く様な大型提案をする事が肝心と思う。

山口 巌

コメント

  1. virtue337 より:

    アメリカ軍の軍事力は現在でも絶大だと思います。義務ではないので、兵士を集めるのには苦労しているようですが・・・。その気があれば、いつでも軍事的行動にでることは可能だと思います。オバマ大統領ではなく、ブッシュ大統領の時代にこの出来事が起こっていたなら・・・、すぐにアメリカ軍を派遣する方向に向かうのでは(軍事ビジネスの為にも)・・・と考えてしまいます。リビアで今起きていることを革命ととらえるならば、それは他国の手によってではなく、その国の人々によってなされるべきだと思います。良識ある考え方のできる指導者であれば、ある国で革命が起こった場合、他国がすぐに(軍事的に)関与するのではなく、まずは見守るということを選択し、状況を冷静に判断し、必要であれば行動を起こすというスタンスをとるのではないでしょうか?革命は、他力ではなく、当事者たちによってなされてこそ意味があり、最も良い結果も望めるのではないでしょうか?無関心は罪だと思いますが、オバマ大統領は無関心ではなく状況を冷静に判断しようとしているように見えます。

  2. delta2607 より:

    「尖閣での事件」とそれ以降頻発するが国内では殆ど報道されない「反民醜デモ」を例に出すまでもなく、民醜はテメエ等に不都合な情報を一切公表しないためマスゴミを「民醜宣伝省」に変えたのだが、その根底には大多数の国民が「テメエ等の日々の生活に直接関係ないから無視した末の無知」の状態にあり、最終的には「事が起こってから狼狽」するのが目に見えている。この悪しき習慣からなる被害は戦争・テロ・原子力災害・自然災害等、事が重大な程計り知れないものになろう。

    現状を変えるには、民醜政権を速やかに解体し、民醜政権の間隠蔽されていた全ての情報を公開して民醜の政治的責任を厳しく追究する事から始めるのが何よりの急務であろう。

  3. ksmo2011 より:

    此の国の不幸は、此の国を支える本流の政治家の誰もが、此の国の憲法は、アメリカに押しつけられたものであり、憲法を変えなければ、此の国を守ることが出来ないと考えていることだ。然もその考え方を、国民は、全く支持しない。
     だから、此の国では、憲法に忠誠を誓うことが出来ない。
     それが何よりの不幸だ。
     そして、更に都合の悪いことに、変えたくても変えることが出来ない憲法の下で、憲法が此の国を守ることを禁じていると思い込んでいる、或いは、言い方を変えれば、だから憲法を変えなければならないという理由付けを補強するために、此の国では、此の国を守ることが憲法違反だと思われている。
     此では国を守ることなど出来ないし、愛国心など育ちようもない。
     憲法は、国民の心の拠り所であり、愛国心の源であり国民の精神の支えなのだから、その支えを政治家が否定しておいて、愛国心を押しつける。或いは国を守ることを押しつける。
     そこに捻れがある。
     実は、此の国の現行憲法は、自衛権の存在を全く否定していないし、集団的自衛権も全く否定していないし、その自衛のための手段を保持することも全く否定していないことを、つまり、現行憲法下での自衛を高らかに宣言し、国民の使命を語ることをしなければ、何も解決しないと言うことを、認めるべきだ。