アゴラブックスから、新刊電子書籍発売のご案内です。昨年PHP研究所から発行された竹中平蔵氏・土居丈朗氏・鈴木亘氏と池田信夫の著書『日本経済「余命3年」』が、電子書籍になりました。
竹中平蔵/池田信夫/鈴木亘/土居丈朗 (著)
発売日:2010年12月10日
出版社:PHP研究社
価格:900円(税込)
頁数:全225ページ
「よく日本経済は『全治3年』などという人がいますが、私は『余命3年』と考えたほうがいいと思います。2012年、13年までが最後のチャンスで、それを超えていまのような状況が続くと、本当に何が起こるかわかりません」(本書の竹中平蔵氏の発言より)
本書では、竹中平蔵氏、池田信夫氏に、財政学の専門家である土居丈朗氏、社会保障の専門家である鈴木亘氏を加え、日本経済における財政のあり方を論じています。
無為無策の民主党政権に対し、経済のプロである4名が、財政危機を乗り越え、日本を甦らせるための方策を熱く語り合います。
<序文の一部と目次をご紹介します>
9月17日に日本銀行が発表した統計によると、6月末の段階での国と地方の債務残高が1035兆円と、初めて民間企業の債務残高を上回りました。これは政府予算が膨張する一方、民間の経済活動が停滞し、債務が減ったためです。政府債務はGDP(国内総生産)の2倍を超えるという先進国では最悪の水準に達しましたが、2011年度予算の概算要求も96.7兆円と昨年より膨張し、財政再建のめどは立ちません。
他方、欧州ではギリシャを初めとして各国で財政危機が表面化し、日本でも同様の事態が起こるのではないかと憂慮する声が強まっています。しかし債券市場では長期金利が1%を切る水準まで低下し、外為市場では円が買われて15年ぶりの高値をつけるなど、市場は財政リスクをあまり意識していないようにみえます。
このように潜在的なリスクの高い債券が高い価格(低金利)で取引される現象は、2000年代前半の欧米にもみられた現象で、一種のバブルになっている可能性があります。しかしバブルのむずかしいところは、その最中には誰もが正しい価格だと信じて取引していることです。特に日本国債のドル建て価格は、ここ20年近く上がり続けており、これがバブルだとすると、史上最長のバブルだということになります。このため「財政危機論は狼少年だ」と嘲笑する向きもあります。
政府・与党の中にも、楽観論があります。亀井静香・前財政金融担当相は「財政危機はフィクションだ」と公言し、「政府の借金は税金を取ればいくらでも返せるんだから、財政危機はありえない。不況のときは財政赤字を恐れずに公共事業を増やせ」と主張しました。税制調査会の専門家委員長である神野直彦氏は「政府債務を元利すべて返す必要はない。政府債務は借り換えられるのだから、ずっと借り続ければよい」と主張し、社会保障支出の増額を主張しています。
このように財政の維持可能性というすべての国民の生活にかかわる問題について意見がわかれていることは、日本経済の不安要因です。民主党政権の中でも、2009年の衆議院選挙のマニフェストで約束した子ども手当などの福祉支出を満額実施すべきだとする人々と、財政に配慮して政策を修正すべきだとする路線が対立しています。野党の中にも、財政再建の道筋を明らかにしている党はありません。
本書は、このように混乱した状況を整理して財政の現状を明らかにするため、私が司会をつとめ、財政学の専門家である土居丈朗氏と社会保障の専門家である鈴木亘氏に現状を報告していただき、竹中平蔵氏に日本経済の中での財政のあり方を論じていただこうという発想で始まった企画です。座談会は2度にわたって行なわれましたが、事前に財政や社会保障の状況についてのレポートを出して意見交換するなど、研究会のような形で進行しました。
なお書名に「余命3年」と入れたのは、61ページで竹中氏が「全治3年」という楽観論に対する皮肉としておっしゃったものです。これは、あと3年で日本経済が絶命するという意味ではなく、今のような奇妙に安定した状態はあと三年ぐらいしか続かず、それまでに何もしないと、それ以降はどういう不測の事態が起こるかわからないという意味です。
目次
第1章 「国家破綻」に至るシナリオ
財政運営戦略で財政赤字は解消しない
歳出の「大枠」しか決められなかった理由
埋蔵金は、あてにしてはいけない
年金、医療、介護の”債務”は1400兆円以上
今後10年で、国債はさらに300兆円発行される
需給ギャップが埋められない民主党政権
国債が国内消化できず、金利が暴騰する可能性
問題は、日本の「期待値」を高められるかどうか
IMFが介入する可能性
日本経済は「余命3年」
「小沢待望論」が、さらに日本を悪くする
第2章 税と世代間の負担をどうするか
消費税は早期に上げるべきか
「早期の増税は失敗する」というアレシナの提言
消費税増税で世代間格差は解消できるか
法人税率は20パーセント台が適切
高い法人税が日本を空洞化させる
第3章 社会保障をどうすべきか
「社会保障の充実」は可能か
「社会保障関係費」を聖域にしてはいけない
財源と権限を地方に
コスト感覚は必要
需要と供給を調整するのは「価格」
所得再配分の役割を果たしていない日本の社会保障
大事なのは「選択と集中」
「ベーシックインカム」の現実性
社会保障問題と教育問題は一緒に議論せよ
経済学者は信用できないか
第4章 経済成長の鍵になる考え方
「スパイキーな世界」に住む
郵政民営化の見直しが、財政をさらに悪化させる
いまこそ小泉改革に戻れ
霞が関を「成長産業」にする愚
大事なのは労働市場改革
日本の司法風土が経済成長の足を引っ張っている
「促成栽培国家」からの卒業を
日本はすでに「同質集団」ではない
構造改革の実現は「貧困対策」から
日本人の多くは自由主義者
あるとき突然、急変する日本
第5章 真の「政治主導」の実現を
予算を財務省から取り戻す
官僚の知恵をいかに使うか
間違った「政治主導」とは
”第二厚労省”を機能させる
霞が関にインセンティブ・メカニズムを
なぜ「日本改造計画」は実現しなかったか
行政刷新会議で「規制の仕分け」を
「個人主義」に根ざした制度設計が大事
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