私の一昨日、昨日の記事に対してtwitterを中心に一定の反応があり、当然の事ながら中には一部手厳しい批判もあった。
Blogosで偶然世田谷新区長の記事を発見し、これに焦点を当てた記事を書いたのが経緯である。
しかし、冷静に考えてみれば何も世田谷に限った話ではなく、今回の統一地方選挙で、原発から再生可能エネルギーへ同様のスローガンで当選した候補者も多かったであろうし、そのスローガンを支持した有権者も多数いた筈である。
漠然とそう考えている時に、アゴラに下記コメントを頂戴した。
2. hogeihantai2011年04月27日 14:43
山口さんは東京都民だと思いますが、都民は今後も東電営業地域外に立地する原発から電気を供給して貰うべきとお考えのようですね。私は大田区民ですが、高くなっても構わないので原子力以外の電源にして欲しいと思っています。原発の推進論者は(1)経済性、(2)化石燃料の安定供給、このふたつを挙げますが(2)は中東の政治不安などでの石油価格高騰を心配してるので、結局原子力の経済性を一義的な論拠としている訳です。
週刊新潮によれば原発10基で7000億円が福島に降ったと報じてますが、原発を誘致した、あるいは容認した福島県人は金に目が眩んで危険に目をつぶったともいえます。一方で頑なに終始一貫して原発に反対した県民もいました。安価な原子力に恩恵をうけ都民がこれからも原発を推進するということは、原発の新設、増設が行われる地区の住民の対立を煽り、周辺住民に危険を甘受してくれと言うに等しいことです。
都民に電気を供給する原発を建設する為に田舎の住民が反目しあっても仕方ない、若干の危険は我慢してくれとお考えですか?この質問には是非お答え頂きたい。山口さん回答をお待ちします。
飽く迄推測であるが、原発事故で苦しむ避難民を目の当たりにして、大なり小なり口には出さないまでも多くの都民は同様の気持ちを持っているのではないだろうか?人として当然と言えば当然である。
質問に答える前に前提に就いて先ず説明すべきと思う。先ずは、3.11を分水嶺に経済の仕組みがすっかり変わってしまった事実である。
3.11以前であれば、経済が活況となれば製造業の稼働が上がり、結果より多くの電力を消費するに至った。個人消費でも所得が上がり、大型の家電を購入し、より多くの電力を消費した。つまり、消費電力の増加は二酸化炭素の排出問題を例外とすれば好ましい事であった。
一方、3.11以降は供給電力の範囲でしか製造業は稼働出来ない。製造業の稼働制限は結果GDPを圧迫する。判り易く言えば、国も国民も電力の供給制限により貧しくなると言う冷徹な事実である。
電力の供給制限によりこれから起こるであろう現象として企業の業績悪化に伴う人員整理が予想される。父親はリストラにより解雇。子供達は就活に失敗、止む無くフリーターと言うのはありふれた風景になるような気がする。
既に眼前にある風景としては、駅や公共施設の照明が暗い。目の不自由な方に取っては不便を通り越し、危険極まりないのではと危惧する。エスカレーターの多くも止まっている。結果、稼働している遠く離れたエレベーター迄歩くしかないと思うが、足の不自由な人、老人、妊婦さんそして小さな子供連れのお母さん方に取っては苦痛だと思う。
原発から再生可能エネルギーへを安易に叫ぶ政治家に賛同出来ないのは、電力供給制限のしわ寄せは結果こういう弱者に来る事が確実なのに、そこを無視して議論しようとするからである。
長期的な視点で考えれば、日本の根本問題である少子高齢化対策にダメージを
与える可能性が高い。財政悪化により少子高齢化対策の財源を見つける事が益々困難に成るからである。
その結果、日本の出生率では、毎年の死亡者数をカバーすることができない。また、日本の移民政策では、経済を押し上げる力となる世界の頭脳、労働力、納税者を利用することができない。日本は縮小に向かっているのだ。
中期的な視点では、日本の財政上の最重要課題である債務問題への影響であろう。昨日、米格付け会社のスタンダード&プアーズ(S&P)は日本国債の格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ」(弱含み)に引き下げたと発表した。
米格付け会社のスタンダード&プアーズ(S&P)は27日、日本国債の格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ」(弱含み)に引き下げたと発表した。
長期国債の格付けそのものは、21段階のうち上から4番目の「AAマイナス」を維持した。しかし、東日本大震災や原発事故の影響で復興に向けた費用がかさむ可能性に触れ、「大規模な財政再建策が策定されず、(日本の)財政が予想以上に悪化すれば、格下げとなる可能性がある」と指摘している。
ロイターの記事が示す通り、日本国債暴落のリスクが高まった事は否定出来ない。
最後に説明したいのは、BBCの調査で世界に最も良い影響を与えた国に2年連続して選出されたドイツが脱原発に舵を切っているのは事実であるが、ドイツは日本の様な債務問題を抱えて居らずその分エネルギー政策に於いて政策選定の余地が大きいと言う違いである。
日本はドイツのやり方を参考にしたり、学んだりする謙虚さを持つ事は必要であるが、追随は膨張する一方の国債残高の大きさから起因する債務問題の決着が見えて来ないと無理と思う。
さて、個別の回答に移る。
私は大田区民ですが、高くなっても構わないので原子力以外の電源にして欲しいと思っています。
是非、割高な電気料品を支払い保障に苦しむ東京電力を支援すれば良いと思う。現に関西地域では電源を原発以外に指定し割高な電力料金の支払に応じている例がある。具体的には電源をバイオマスに指定し料金は通常の2倍らしい。
私に相談する前に東京電力を訪問し話し合うテーマと思う。
都民に電気を供給する原発を建設する為に田舎の住民が反目しあっても仕方ない、若干の危険は我慢してくれとお考えですか?この質問には是非お答え頂きたい。山口さん回答をお待ちします。
これは原発建設に限定された話ではなく、米軍基地問題や地域のごみ焼却炉建設問題にも相通じる、全体最適継続是非を問う話である。個人的には、、全体最適継続、は沖縄基地問題でそもそも袋小路に迷い込み、今回の原発事故で原発の新設は現実的にほぼ不可能になったと思う。従って、次回の国政選挙で対立軸を明らかにして国民の信を問うべきテーマと思う。
電力問題に限定して答えるならば、電力の地産地消とスマートグリッド採用による逆潮流電力受け入れ拡大を中核に原発地域の負荷軽減に努力する事位しか思い浮かばない。
従って、電力の安定供給は必要で、電力料金は安ければ安い程良いを達成の為には、安全性の厳重確認を条件に、稼働原発の運転継続、技術的な問題がないのに運休中の原発の再稼働、廃炉が確定の福島原発の穴を埋める為の電源を化石燃料とする発電への回帰は止む無しと考える。
山口 巌
コメント
早速のご回答有難うございます。3.11を契機に変わった経済の仕組みには原子力のコストも含まれます。米国では新規の原発を計画中の場所は電力事業の自由化が遅れている州が多いのです。採算性に疑問を持たれる事業が多く、銀行融資には殆どが連邦政府の保証がついてます。Moody’sは2008年6月2日に原発事業の見通しにネガティブなレポートを発表しています。(Moody’s: Nuclear plant construction poses risks to credit metrics, ratingsで検索すれば記事があります。)
The cost and complexity of building a new nuclear power plant could weaken the credit metrics of electric utility and potentially pressure its credit ratings several years into the project. 福島の事故以前の警告ですから今後原発の経済性には大きな疑問符がつくでしょう。米国政府は原子力推進の立場でしたがトウモロコシの燃料用エタノール生産にも巨額の補助金を出すくらいですから、彼らの産業政策には経済合理性がないのです。
大阪の橋下知事も新規原発を止めると表明してます。山口さんがいくら原発推進の旗を振っても、肝心の電力会社の経営陣が原発の新設はやめますよ。東電をみて明日はわが身かと恐れおののいているでしょう。事故が起こればせっかく手に入れた地位、名誉、収入を失うのですからね。原発を増やせば増やすほどせっかく手に入れたものを失う確率が増えるだけです。増設をやめても失うものはありません。幸か不幸か、こういう計算をするのがサラリーマン社長の性なのです。
街が暗くて不便を感じている方はいらっしゃるでしょうが、節電の仕方の問題であって、いくらでも対策は講じられます。それより、生活を引き裂かれた南相馬や飯館の方々のことを案じ、二度とこういった人々を出さないように今から行動していくことが大事なんじゃないでしょうか。あなたの議論には人間としての根本的な暖かさが欠落しています。