スマートフォン流行で通信事業者は判断を迫られる

阪上 健生

よく目に見えるものより目に見えないものの方が大切なものが多いといいますが、電波もその一つだと思います。さらに付け加えると目に見えないものは無制限に使えるような気がしますが、何もしなければ使えなくなってしまうのも特徴です。

電波は周波数ごとに分けられた高速道路のようなもので沢山の人が利用すると車が渋滞するように電波も渋滞してしまいます。スマートフォンは我々の生活を便利に楽しくさせてくれましたが、その分データ通信量が急激に増え、米国では携帯通信事業者大手のベライゾンワイヤレス・AT&T・T-モバイルがパケット通信定額プランを廃止し、従量課金制に移行しており、スプリントは定額制プランを継続しています。

この遠い対岸の流行は日本にもやってくるのだろうか?

表1

日本でもスマートフォン市場は急激に伸びており、米国と同じ問題を抱えています。docomo・au・softbankはそれぞれどのような対策をするのか気になるところです。まずは自前で持っている、または提携しているWi-Fiスポットをスマートフォンユーザーに開放し、圧迫する携帯電話回線を和らげようとしていますが、年々倍増する通信量をこれだけではカバーすることができないのが現状です。そうなれば、docomoは近い将来データ定額プランをあっさり見直すと思います。米国の3社がとった従量課金制という方法とは少し異なり、一般ユーザーなら現在と変わらないぐらいの料金設定を維持し、ヘビーユーザーのみ追加で課金されるという仕組みをとるでしょう。すでにdocomoは3.9世代通信サービスのXiでこのような料金プランを設定しているので、従来の通信サービスもこれに合わせるのではないでしょうか。

auは国内主要3キャリアの中ではもっとも有利な状況なので定額プランはなくならないと思います。というのもauはWiMAXを提供しており、こちらをスマートフォンに開放することで回線の混雑を大幅に解消できるからです。現在WiMAX搭載しているスマートフォンは1機種ですが、KDDI 田中社長の「秋まで待ってください。秋にどかんとでてきますので」という言葉を信じれば秋には海外国産のスマートフォンを多数用意してくるはずです。WiMAX搭載機種を増やす理由の一番はこの回線の問題でしょう。また、米国で定額プランを維持しているスプリントもWiMAXを提供しています。

最後にsoftbankはどうするかというと、非常に難しいところですが実質的に値上げをすると思います。料金プランはdocomoと似たものになると思います。softbankは成長と止めることができない会社なので明らかな値上げはできない上に、XiやWiMAXといった次世代サービスの提供がまだできていない状態です。そもそも、圧迫するほど回線を使用しているのは、一部の不正ユーザーともいわれています。彼らは携帯電話の回線を使って24時間ファイルの送受信を繰り返し、回線混雑の原因を生んでいます。しかもそれが、softbankの稼ぎ頭であるiPhone利用者に多いといわれているのが皮肉なところです。それに対抗するには一定以上の通信をするユーザーには追加で課金されるという仕組みをとらざるを得ないでしょう。そしてsoftbankはほとんどのユーザーは追加課金はされないという表をつくって、値上げされていないように演出すると思います。

表2

docomoにしてもsoftbankにしても仮に料金プランを変更した場合、一般ユーザーには今のところ影響がないのは確かだと思います。しかし、今やスマートフォンではテレビ電話もできるようになりましたし、またクラウド化により、段々コンテンツはウェブ上に置くようになり、日に日にデータ通信量が多くなるのは明らかです。こんなにテクノロジーは進化しているのに、通信量を抑えるために昔のアナログ回線の様にちまちま気にしなくてはいけません。技術革新の過程でハードウェアがソフトウェアに追いつかなかったり、その逆があったりしますが、インフラが追いつかないというのは本当に不幸なことだと思います。

根本解決には次世代通信サービスをいち早く提供するしかありません。決してそれが遅れているわけではありませんが、想定以上にスマートフォンが普及しました。よって、この不幸は長くは続かないと思いますが、しばらくは高い費用を支払うか不便を強いられることになると思います。

サイトM&A コンサルタント 阪上健生