震災後、日本の取り巻く環境の変化は、企業の海外進出を後押しする結果を生んでいる。『円高・電力不足・増税』である。
原子力発電所の停止により、電力不足が深刻化し、企業の生産体制に影響が出ている。また、災害復興で、日本企業の海外資産の売却があるのではないかということで、円高になり、米ドル、ユーロの先行き不安も煽り、円高が止まらないという状況である。そして、復興資金は、増税することで、資金調達を行うという方針を決めている。
特に、国内生産を主に行っている企業にとって、この状況は、商売を続けていけるのかという不安要素だけが増幅している。サプライチェーンが震災により、非常に大きな打撃をうけた自動車産業では、日本国内での製造を続けていくこと事態が厳しくなっているということで、東南アジアなどに製造拠点をシフトさせる動きが始まっている。
中国市場への進出と言えば、日本の国内市場が、現状、景気回復の兆しが見えない状況で、電力不足、増税となれば、消費意識も低下する。近隣諸国で、内需が活性化している中国市場への参入は、新しい市場開拓ということで、日本企業にとって、売り上げを伸ばすチャンスがあると相当期待されている。
私は、上海で、2003年頃から中国進出支援のビジネスを行っているが、今年の6月以降、海外進出を真剣に考えている日本企業の経営者が、多数、弊社を訪問するようになった。相談者の多くが、口を揃えて、『日本の経済の先行きは、益々、疲弊していくことが、肌で感じるようになってきた。特に、電力不足は、商売にとって、大打撃だ。このまま、何もしないで、日本で商売を続けていくと、いずれ、だめになるのではないかと言う不安感だけが増す。今のうちに、海外で、拠点を作り、どんな形でもいいから、商売を行いたい。』と話す。
このような話をする経営者は、製造業の経営者だけではなく、サービス業を営んでいる経営者も少なくない。日本の市場が、このままでは、駄目になる。という不安感は、日本国内の、どの産業にも危機感があるようである。
海外に新天地を求めて、進出する日本企業は、これから後を絶たない。数年前までの海
外進出は、『将来性を考えて、余裕があるうちに進出したい。』という企業が多かったが、今は、商売人が『逃げ場を捜しているような雰囲気』がある。悲痛な思いからの国外脱出するかのようにも感じられる。