本質的な問題は「ドルの基軸性」でしょうね!

前田 拓生

ロイター「民主・共和両党指導部、10年間で1兆ドルの赤字削減で合意=米大統領」

まぁ、「大方の予想通り」と言ったところですね。まさか「デフォルトになる」って思っていた人は少ないでしょうから、妥当な結果といえます(参考:前田ブログ「目先、ドル安(円高)は継続するでしょう!」)。

これを受け、円/ドルも若干円安ドル高気味に動いているようです。

前田拓生のTwitterブログ

とはいえ、そもそも米国の双子の赤字(財政&経常収支)は今に始まったことではなく、しかも、巨額に上っていることもあり、これが市場の話題になること自体、市場参加者の多くは「今更」というイメージが強いはず。これが材料になって市場が動くこと自体、「余程材料がないのね」ということにもなるのですが、実際の材料は、ここにあるのではなく、リーマンショック以降のドルの基軸性の低下にあるように思います。

つまり、ドルが基軸通貨でないならば「普通に経済理論が成り立つ」はずなので、「なかなか買える通貨ではないな」となり、「今更ながら」であっても、市場としてはいろいろな経済現象を“普通に材料視する”ことになることから、今更の材料を、殊更に問題視しているのだということです。

そういう意味からすると「今回は何とかなった」とはいえ、議会のねじれが解消されたわけではない上に、来年の大統領選挙に向けて、ますます攻防が激しくなるわけですから、同じ材料で何度もドル危機が訪れることになるでしょう。とすれば、現時点のドルの戻りはリバウンドに過ぎず、さらなる売りによって、大きく下落する可能性も否めません。

オバマさんとしても貿易振興を掲げていることもあり、過度のドル安に対しては口では懸念を表明しても、腹では「まぁ、良いか」っていうことかもしれません。

このような中、もし、ドルが強くなるとすれば、米国として「ドルの基軸性はどうしても維持したい」という強い意志が示された場合ではないでしょうか。現状でも「ドルの基軸性を手放す」という選択肢はないのですが、市場では、少なくとも取引シェアにおいて、徐々に低下していることから、今のままでは基軸性が失われる可能性が高いといえます(現在の「基軸性」はあくまでも“ディファクトスタンダード”に過ぎない)。そこに米国政府として「どのようにコミットするのか」が今後のポイントになると考えています。

以上から、“とりあえずの危機”は去ったものの、ドルの基軸性に対する米国政府としての強い意志が感じられなければ、これで安心とは言えず、やはり、ドル安円高傾向が継続することになるとみています(私見です)。

このように…

今のドル減価が「基軸性」に起因するのであれば、やはり、為替介入などの量に基づく政策は無効。といって日本円の質を低下させる方策(財政危機を招くような)は論外なので、日本政府&日銀の出る幕はない!

とすれば、日本企業、特に大手製造業の下請け小企業にかなり大きなネガティブな影響を与えることになるので、年後半にかけて、さらに景気が下押しする可能性は否めません。その意味で、これらに対する手当ては必要になるでしょう。

しかし一方で、今後も円高が継続するのであれば、単に嘆くだけでなく、その購買力を積極的に活用する方法を政策的に模索する必要があると考えています。