Memento Mori, Carpe Diem 起業や転職を考えている人へ - @ogawakazuhiro

Memento Mori, Carpe Diem。メメントモリ、カルペディエム、と読みます。
直訳すると「死を想え。今を楽しめ」という意味です。
もう少し分かりやすく意訳して、「いつかは誰にでも死は訪れる。だから今を全力で生きろ」と言えば、受け入れやすいでしょうか。

ただしこのMemento Mori, Carpe Diemという言葉は本当は一つの組合わせではなく、二つの個別の警句です。どちらも聖書や詩文、ラテン語の文献などで散見される、ヨーロッパではポピュラーな人生観ですが、Momento Moriは前述の「いつかは誰にでも死は訪れる。だから今を全力で生きろ」というポジティブな意味に加え、「今は絶好調でも明日は分からない、人はいつか死ぬことを忘れるな」という自分への戒めという二重の警告になっています。ヨーロッパの絵画や文学にはスカル(頭蓋骨・髑髏)をモチーフにしたものが多く見られますが、そのほとんどはこのMomento Moriの暗喩として用いられているのです。織田信長が、敦盛で「人間五十年、化天のうちを比ぶれば、夢幻の如くなり、一度生を享け、滅せぬもののあるべきか」と謳ったことと、ほぼ同じ意味合いを含むと思ってください。

それに比べると、Carpe Diemは直訳通り、後先を考えず人生を無駄にするなということで、「命短し恋せよ乙女」と同じく青春期にふさわしい感じの言葉ですね。でも、そういう明るさもまた人には必要です。

僕は、この二つの警句の組合わせを以て、起業家としての自分の聖句としています。
僕は昔からスカルが好きで、何かしら身に付けていることが多いのですが、それは「Momento Mori, Carpe Diem」という聖句を自らに思い起こさせるためでもあります。実は僕が経営するモディファイのロゴはギリシア文字のφなのですが、最初はスカルをベースにしたロゴマークにしようと考えていたので、スカルの形状に似たシルエットを持たせる工夫をしています。

ベンチャー起業家は多額の借金や自己破産などのリスクと、日々の過大なストレスと引き換えに、大きな成功を目指しています。(ベンチャー起業についてはこちらをご覧下さい)ベンチャー起業とは生涯獲得賃金を最大化し、しかもそれをなるべく前倒しに稼ぐ試みです。そのために一生分の労働を数年で行うのです。ゆっくりやって、60歳で資産家になればいいやと思って起業した人はほとんどいません。
だって、来年必ず自分が生きていると、本当に言い切れる人はいないわけです。いつどうなるかわからないし何が起きるか分からない。人生は突然終わるものなんです。だから急がないとならない。元気なうちに、やれるうちにやるべきことをやるしかないんです。ベンチャーとは事業という領域で、できるだけ生き急ぐことなんです。(うちにインターンできている大学四年生が就活を一年先延ばしにして留年するというので、バカっ、と言っておきました。今度の3月にキッチリ卒業してうちで働きなさいと。)

これを暗い、悲観的すぎると言わないでください。決してそうではありません。
人間はいつか死ぬ。しかもそれは意外に早いかもしれない。あるいは、いまは事業がうまく行っていても明日は分からない、だから有頂天にならず、やるべきことを懸命に頑張れ。Momento Mori。
そういう戒めなんです。
同時に、ただ働き詰めでも明日死んだら道半ばで、なんの楽しみもない。働くばかりで、人生を楽しむことを先延ばしにしてしまってもダメです。つまり、がむしゃらに働きながらも、何か楽しいことを見い出していく必要がある。Carpe Diem。

映画『ソーシャル・ネットワーク』で、ショーン・パーカーがFacebookの成功前夜に、住む場所を無くしたときに、ヴィクトリア・シークレットのモデルに「ホームレス・ロックスター in パロ・アルト」とからかわれます。パロ・アルトとはシリコンバレー近くの地名で、Appleの本社があることでも有名です。シリコンバレーの寵児が住む場所がない、ということをおかしがっているわけです。
それでもそこに悲哀がない。いつか成功してやると思っているし、やってきたことに悔いがないからです。

自分で言うのもなんですが、僕も労働時間は相当に長いです。頭の中では常に仕事の戦略的なことを、いろいろと考えています。でも、同時にいつ死んでもいいくらい(まだ達成感を得られないので、残念とは思いますが、まあ是非も無し、と思えるくらいには)楽しい時間は短いながらも確保したいし、その努力をしています。

起業家は常に多大なプレッシャーにさらされていますが、それでも底抜けに陽気であるべきです。弱気になると悪運に差し込まれます。Momento Mori, Carpe Diem。
どうせ死ぬより悪いことはないのだから、やるべきことにとりくむ。将来の楽しみのために今を必死に働く、でもいつ死ぬかもしれないのだから、やりたいことも我慢しないで時間をやりくりする。明るく楽しくガムシャラに働く。そういう気概と気合いをMomento Mori, Carpe Diemは象徴していると思います。

年をとって腹が出てきたら、カッコいい服も似合いません。歯が抜けたら美味しいものも食べられないでしょう?

起業でも転職でもなんでもいい、なにかやろうと思ってためらっている人がいたら、一緒に口ずさんでみませんか?Momento Mori, Carpe Diem、と。