3.11の大地震とそれに伴う巨大津波、福島原発の事故など、社会におけるリスクを土の様に評価し、対応するかということが重要になってきている。しかし、「リスク」というものについて十分に理解されているとは思えない。そこで、「リスクとは何か」「リスクをどの様に管理するか」「リスクにどの様に対応するか」ということについて論じてみたい。
辞書で「リスク」をひいてみると、
1 危険。危険度。また、結果を予測できる度合い。予想通りにいかない可能性。「―を伴う」「―の大きい事業」「資産を分散投資して―の低減を図る」
2 保険で、損害を受ける可能性。
(goo辞書)
といったことが書かれている。
しかし、本来リスクとは「不確実性」のことである。例えば、必ず事故が起きるのであれば、それは危険だとかいうことではない。やるべきではないことというだけのことだ。ところが、絶対に起きたり、絶対に起きなかったりすることは現象としてはない。この不確実さがリスクの本質である。
だから不確実性の程度を測るために、地震研究などでは発生確率を研究している。プロジェクトマネジメントでもリスク要因を洗い出して、それぞれの発生可能性=リスクを計算する。開発工数の増減や、ハードウェアのスペックの過不足、ユーザが要求を変更するなど様々なリスクがある。
これらのリスクを洗い出して、それが発生したり、しなかったりする結果を管理することは大切だ。また、リスクは日々変化していく。当初はリスクが高かったものが、日を追うに連れて小さくなることもある。その逆もあるのだが、そういう変化を把握することも大切である。
リスクの動的な把握と同時に、それが発生したときの対処を決めておくことも大切だ。リスク対応には1)「軽減」2)「回避」3)「転嫁」4)「受容」という方法がある。
1)軽減:その事象が発生するリスクを低減したり、発生した場合の影響を軽減すること。
2)回避:その事象が発生しない方法を選択して、リスク自体をなくしてしまうこと。
3)転嫁:その事象の発生する可能性があることを他者に任せたり、発生した影響を他者に負担させること。
4)受容:その事業の発生した結果を受け入れること。
となる。
今回の震災や原発事故について「リスク管理」を考えてみる。
リスクの測定では地震の発生の予測については、膨大な予算を使って行われている。しかし、予測制度は「30年以内に発生する確率が80%」という、あまり意味のないものでしかない。これは60歳の人に、30年以内に死亡する確率が80%」と言っているのと同じようなものだ。だから、地震が起きる可能性については「いつかは分らないけど、大きな地震は発生する」と覚悟する必要がある。
福島原発の事故については、地震に伴うリスクの洗い出しに漏れがあったことが分っている。地震の揺れそのものには十分な対応がされていたが、冷却装置の稼動に必要な電源の確保について、認識されていないリスクがあったということだ。地震に伴って、あれほどの大津波が発生することのリスクが評価されていなかったことが一番問題であった。
リスク対応は以下のように考えられる。
1)軽減:地震の発生可能性を下げることは技術的には出来ない。誰かが「地震はアメリカの地震発生兵器によって引き起こされた」と言っていたが、それならば地震の発生を抑えることも出来るので、未だに西海岸で自信が発生しているアメリカにはそんな秘密兵器はないだろう。地震が発生した場合の影響の軽減は、耐震工事や津波対策の堤防を築くなどある。
地震大国日本では、地震が発生した場合に建物が壊れないように耐震補強をすることは進んでいる。しかし、建物の耐震性は高いが、道路などの公共インフラは液状化などによって大きな被害を受けた。津波については規模の前提条件を遥かに越えるものだったため大きな被害を軽減することは出来なかった。
2)回避:地震については回避するためには引っ越すくらいしかないが、地震が起きない土地はないので、意味がない。しかし、津波については、沿岸部に住まないなどによって被害を回避することは出来る。今回の津波からの復興では、この回避策については是非とも検討しなければいけない。
3)転嫁:一番簡単なのは「保険」である。被害を金銭的な補償によって保険会社に転嫁するわけである。ただ、精神的な被害までは転嫁できない。
4)受容:福島原発の低レベル放射線について、ある程度までは受容するしかない。リスクを受容するケースは主にその影響が軽微な場合である。科学的根拠に薄い制限値で振り回されるのではなく、受容するべきだろう。京都の大文字焼きの様な過剰反応は風評被害を招き、被災地の復興を妨げるだろう。どうしても低レベル放射線が嫌ならば、引っ越せば良い。
古川賢太郎
ブログ:賢太郎の物書き修行
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