昨日の記事の補足、分野別具体論である。
地方の若年雇用政策という最大の成長戦略について述べる。
今の世界で経済政策において最も重要なのは、若年層の雇用政策だ。その意味で結果は出せていないが、中東がもっとも進んだ悩みを抱えており、米国の政策は金融市場最優先で雇用と政治的に叫ぶ割には連邦政府の役割はほとんどない。地方政府と個別企業(自由な経済活動と呼んでもいいが)に丸投げとなっている。欧州はその中間で、国によるが、大雑把に言うとごまかしながらやっている。ノルウェーは血迷って移民政策を進め、イギリスは放置で、両国ではこれを背景に惨劇が起きた。
そうなのだ。イギリスの暴動もノルウェーの惨劇も背景には若者の雇用問題がある。スペインは若年失業率40%、イギリスも20%。この問題が中東の通称ジャスミン革命の背後にある。あれは独裁に対する民主主義革命でもfacebook革命でもない。中東の若年失業率は軒並み30%から50%。貧富の差はかまわないが、職と食物がなくなっては(もう一つの背景は食料高騰)国は持たない。欧州も同じで、米国ですら20%に近づいている。日本は7%で、ここが日本社会の最も素晴らしいところだ。経済が停滞しても社会がほかの先進諸国などと比べ維持できている理由はここにある。
したがって、経済政策としては社会を守るために、この維持をすること、若年失業率を上昇させず、職を生み出すことが重要だ。若年層への新規雇用創出が最重要の社会政策、経済政策、成長戦略となる。それも重要なのは地方だ。東京は日本全体が上がってくれば自然と盛り上がる。日本経済の底力をつけるためには、地方活性化。政治的にも地方が重要。まともに地方を良くするには、地元の大学を出て、地元で就職すること。東京あるいは海外の大学、大学院に行って、地元に戻って仕事をすること。これを可能にするためには、地方に若年層のための新規雇用を作ることが最重要だ。
具体案の一例は、高等専門学校を拡大すること。工業分野だけでなく、農業、漁業。観光。デザイン。エンタメビジネス。アニメ、映画、TV番組を含む。ウェブデザイン、システムデザイン。この高等専門学校に大学院を併設する。大学学部は作らない。建物は、地元の高校、中学、あるいは公民館などこれまでの公共的な建築物を改修して使う。市役所、町役場でもいい。講師陣は重要だが、それを呼んでくるのは、その学校の学長。学長にその分野の大御所で、後進を育て、業界を発展させることに生きがいを見出す一流の人になってもらう。これに実務的なマネージャーをつける。この学長は世界中から教員を呼んでくる。国内なら週末あるいは平日でも週二日体制で来てもらうことは可能だろう。学長によって学校の成否は決まる。一学年40人で2クラス。スタート時は40人で始める。5学年だから400人。大学院は学年20人。教員は最低30人(フルタイム換算)。事務スタッフ20人。
これが好循環となれば、企業、ビジネスはついてくる。そうなればますます学生は集まる。これが仕事を生み出すはずだ。仕事の数としては多くないかもしれない。しかし、そこには希望が生まれる。一つの目標となるルートがある。これは世界を変える。そして学校に行くということはそこにコミュニティが生まれる。若者が社会から離脱しない。地方社会の活力の持続には最も重要だ。
メディアやいわゆるエコノミスト、学者たちは、大都市本社の企業のことしか念頭にないが、そのような企業はグローバル経済の流れの中で行動しており、日本政府の生半可な政策で動かすことはもちろん、つなぎとめることもできない。そして、それらは社会全体の活力が戻れば戻ってくる。だからグローバル企業の競争力を強化する成長戦略を立てることは少なくとも日本では意味がなく(新興国ではまだ意味があるかもしれないが)、地方に集中すべきだ。
東京というのは、日本の上澄み。そして、実は地方は苦労しているから、底力はマグマのように一部たまっている。政策投資効果はむしろ高い。東京は、グローバルにもどこにも逃げられるから、日本、東京の環境が悪くなれば、みんな逃げる(震災が象徴だがそれに限らない)。政治的にも、流動性が高い。小泉に振れ、政権交代に振れ、飽きてつまらなくなれば政治不信で見捨てる。彼らにとっては、政治はエンターテイメントに過ぎない。地方は違う。利権といわれようが、実力のある、地元に口だけでなく実際に貢献する政治家を見抜いている。死活問題だから。
経済的にも、東京は上澄みに過ぎないから、バブルに弱く、金融変動に弱い。地方出身者の集まりが東京で、東京人の個性とは地方人の個性の融合の結果であり、東京だけになったら日本はそこにはない。ただれた汚い町が残るだけだ。もちろん、ローカルとしての東京はあり、その東京はここで議論した地方に当たる。
地方の若年雇用問題にカネ、ヒト、エネルギーを投資する。これが最も重要な、社会・経済・成長戦略だ。