日銀金融緩和の次の一手 - 知民由之

知民 由之

本邦財務省は24日「円高対応緊急パッケージについて」を発表し、「円高対応緊急ファシリティ(1,000億ドル)の創設」ならびに「外国為替及び外国貿易法第55条の8に基づく外国為替の持高報告」の施策を実施、同時に、日銀は「財務大臣より公表された措置が、為替市場の安定に寄与することを期待している。」という緊急声明を発表し、日銀の本気度を示したが、市場には無視され円高が是正されることは無かった。


本邦財務省は4日に4兆円規模と目される円売りドル買い介入を実施、米国債を購入することとし、同時に日銀は金融政策決定会合で資産買入等の基金を10兆円増やし国債、社債、ETF等を追加購入することとした。しかし、効果は数日しか持たず、為替介入に対しては他国から非難を受け、また国内メディア等でも「単独介入はお金をどぶに捨てるようなもの」、「4兆円もの国民負担をそんなもんに使うなんて信じられない」、「いつになったら、介入は無意味だということが解るのだろう」という見解が大勢を占め、集中砲火を浴びることになった。

しかし、よくよく考えれば、日銀が日本国債を買って、政府は米国債を買っただけなのに「日本が為替介入をした」というフレーズになったとたん、政府の米国債購入だけ非難の的になってしまったわけで、日本のためを思って介入に踏み切った財務省には慰めの言葉をかけてあげたい。しかし、事実として、世論も背を向け、為替介入がますますやりにくくなっていることは確かな訳で、そこで、ここは頭を使って、政府が米国債を購入すると各国の調整が難しそうなので、日銀が今の枠組みの中で、日本株指数連動型ETFでは無く、国際株指数連動型ETFを買ってみるというのも一つの手ではなかろうか。

世界的なソブリンリスクで先進優良国の国債は現在極めて需要が強く、日本政府が先進優良国の国債を購入しても迷惑がられるだけで感謝されることは無い。しかし、世界的な景気後退懸念で先進国の株式は一様に低迷しており、日本の中央銀行が世界の先進国の株式相場を下支えしてくれるというのであれば、他国の政府も文句は言いにくい。幸いにも、現在の日銀の「資産買入等の基金運営基本要領」で買えるETFは指数連動型上場投資信託受益権となっているので、国際株指数連動型でも購入可能と思われ、国際株指数連動型ETFの購入は、結果として外貨買いを発生させるので、せっかく日銀は日本株や日本不動産の購入にまで踏み込んだ上に、円高に対する強い懸念を政府と共有しているわけなのだから、ここはもう一歩踏み込んで、為替リスクをとった上で外国株の購入に踏み切り、円高に対する断固とした態度を世界に示してはどうだろうか。