済んだ水よりにごった泥水を好むのは魚の習性でしょうか。雄大に流れるメコン川。その流れの中に身を隠す。かげに隠れたどじょう内閣はにごった水が大好きなようです。
日本の同時通訳が苦労した「どじょう首相」の就任のあいさつを思い起こしてみましょう。
The NY times:では「he compared himself to a loach, an eel-like, bottom-feeding fish with whiskers. 」と言い、Gurdian では「 I’ll never be a goldfish in a scarlet robe, but like a loach in muddy waters, I’ll work hard for the people, to move politics forward.」と派手さはないけど前向きに努力する魚と説明されています。
地味で苦労好きなところを漢字を当て、泥鰌首相は期待のもとに誕生しました。宇宙人といわれた前の前、誰とも相談せずに自分だけが賢いと思いこみ、原発事故処理を遅らせたムノウ人物に続く首相でしたから、期待ムードは高まるのも無理はありません。
さてそのどじょう首相は、このほど、メコン地域開発について日本とカンボジア、ラオス、ミャンマーなどメコン地域5カ国との首脳会議において、インフラ整備で協力する共同声明を11月18日に採択しました。
その内容は日本が総額2兆円の大規模支援することでした。日本の協力の柱は15年までに完了を目指す33件の大規模インフラ整備。東日本大震災やタイの洪水を踏まえ、日本の地球観測衛星を使ってASEAN域内の災害情報を共有する事業に1700億円を投じる。ベトナムの国際空港建設で4600億円、インドネシアの送電線網整備では2300億円の事業費を見込んでいます。
この中で、気になるのは、メコン川へ橋を架けるというものです。私はつい先日、偉大なるメコン川周辺を見てきましたが、あの広大な肥沃地帯を支える母なる川には何本かの橋がすでに架けてあります。長さは7-8キロにもなる大規模工事が考えられます。これらの支援では、ODA予算を使い、相当なる技術力を持つ日本企業の参加が想定されます。
さて、次のような展開が考えられます。
官僚の描いたシナリオ→ODAによる大規模な支援→新興国のインフラ充実→権益拡大する大企業と官僚→結局は、世界の生産拠点のキングになる中国を支援
こんな構図が成り立ちます。野田首相の発表のウラにはこんなシナリオがあると思います。そして、このインフラ充実のための日本企業には、原発建設で悪名高い企業が当然ながらいくつか出てくるのです。つまり、このシナリオには、ODA予算を使い、日本の大企業の技術支援といいながら、官僚のシナリオに乗りながら、権益を広めながら強める一部の上級公務員と一部のものづくり大企業を潤すだけではないでしょうか。これらの流れは、原発、道路建設などを含む自民党が日本のインフラ投資した過去のシナリオをどうじょう首相が再びなぞっただけのアイデアも戦略もない支援策といわざるを得ないでしょう。
なぜなら、インドネシア、カンボジア、ラオスを含むメコン周辺国にとって中国が東アジアのハブ化を強め、さらにアジアの集積地となり、生産拠点としての力を蓄えるだけではないでしょうか。
中国の脅威が増すだけの官僚シナリオに乗ったにごった水が大好きなどじょう首相とその内閣らしい発想だと思います。ご都合主義の支援といわざるを得ないでしょう。 loach(どじょう)ならぬlaundering(ごまかし)でしょうか。
(鈴木和夫 consultant)