一昨日(11月23日)のドイツ10年国債入札で、予定額の60億ユーロ(6200億円)に対して応札が39億ユーロしかなかった。初めて知ったのであるが、これを札割れと呼ぶのだそうだ。
習い性として、債務問題に苦しむ他EU諸国への波及であるとか、日本国債が同様札割れに成らないのだろうかとか考えてしまう。
先ず、ドイツ国債札割れを受けての欧州市場の反応であるが、昨日(11月24日)ドイツ10年国債利回りが23日入札の1.98%から2.2%前後まで上昇している。そしてこれに吊られ、イタリア10年国債が6.9%、スペイン国債が6.5%、フランス国債も3.6%程度迄上げている。
結果、欧州とアメリカの株式が欧州ソブリンリスクを抱える金融株を中心に急落する事となった。
この背景にあるものは投機資金の徹底したリスク回避である。振り返ってみればリーマンショック以前の投機資金は実に肉食系であった。手当たり次第に株式や不動産などのリスク資産を食い散らかし、結果深手を負った。
すっかり草食系になった投機資金が極力リスク資産を回避して、国債などの安全資産に向かうのは当然の成り行きである。
詰まりは、第一段階としてのリスク資産から国債などの安全資産への回避。
次に欧州国債の選別。ドイツ国債のみを安全資産と認定し、それ以外の国の国債はリスク資産と仕訳した。結果、ドイツ国債以外の国債を売却し、ドイツ国債を購入する動きが加速。ドイツに資金が集中したというのがこれまでの経緯。
そして23日入札の段階ではドイツ国債をリスク資産と評価、認定する訳ではないがこれ以上の保有を忌避する結果になったと言う所ではないだろうか?
問題はこの動きが、10年国債の利回りが1%以下の日本、同じく2%以下の米国に何らかの影響を与えるかどうかである。結論としては、可能性は少ないがゼロではないと思う。従って、日本の金融当局はドイツ国債の動向を注視する必要がある。
さて、欧州はどうするかである。欧州の実質米櫃であるドイツが仮に資金繰りに困る様な事態となれば、場合に依っては欧州全体がショック死する可能性も否定出来ない。
考えられる最もオーソドックスな対処は、①.罰則規定も含めた財政規律の強化
サルコジ仏大統領は24日、「独仏は近日中に欧州連合(EU)の基本条約の改正を共同提案する」との方針を明らかにした。欧州の政府債務(借金)危機の解決に向けて、共通通貨「ユーロ」を使う国々の間で、財政規律をさらに強める狙いがある。
メルケル独首相やモンティ伊首相と仏ストラスブールで会談した後の記者会見で、改正案の共同提案について述べた。基本条約は「リスボン条約」と呼ばれ、EUを運営するうえでのあらゆる規則が盛り込まれている。
サルコジ大統領は条約改正の具体的な内容には言及しなかった。ただ、各国で財政赤字が膨らむのを抑えるのが目的とみられる。各国の財政運営や経済政策について新たな規制を設けたり、規制が守れなかったときの制裁措置を強めたりすることが念頭にありそうだ。
②.ユーロ共同債の発行
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欧州連合(EU)の行政部門を司る欧州委員会(European Commission)がユーロ共同債の導入を提案しました。ユーロ共同債とは欧州の単独の国が国債を出す代わりに、EU圏全体として債券を発行することを指します。もっとカンタンな言い方をすれば米国財務省証券(=USトレジャリー)のユーロ圏版だと思えば良いでしょう。
①、②をパッケージで実行する事であろう。
危惧するのは、これは実質ドイツ主導による欧州の統一であり、嘗てヒットラーが大砲と爆撃機を使って只管拡大を目指した第三帝国そのものではないかと言う疑問が払拭出来ない事である。
ドイツ国民の意識の底流には、ドイツこそがその源流を古代ローマ帝国に求める神聖ローマ帝国の末裔であり、彼らによって再建すべきと言う野心がある様に思えてならない。
そしてこの野心はドイツ人を幸せにするかも知れないが、他の欧州諸国を中国におけるチベット民族の様な気の毒な境遇に追いやる気がする。
山口 巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役