明日の大阪ダブル選挙をきっかけに日本版「ジャスミン革命」が起こる事を期待する

山口 巌

ジャスミン革命に就いては最早説明不要であろう。警察の横暴な対応に抗議し、焼身自殺した26才失業青年が従来より、高い失業率とインフレに不満を持つ一般国民の共鳴を得、あっと言う間に抗議のデモは国中に広まり、結果、大統領をサウジ亡命に迄追い詰めたと言う一件である。

大坂でのダブル選挙の結果如何では、中央、地方の行政組織が一気に良い方向に変わるのではと期待しているのである。


選挙に臨む橋下氏の主張は極めて簡潔、明瞭である。彼が知事を務めた大阪府と、それに含まれる大阪市の両者に組織と業務の重複が多いので、一体化し効率化を図ると言うのである。

確かに考えて見れば、現在の組織は150年以上前の明治維新後直ぐに出来たものから左程変わっていない様に思う。一方、業務達成に活用する通信、交通と言った基幹インフラは、当時の人に取っては想像出来ない位発達した。殊に通信はここ10年ちょっとのインターネットの発達で大きく変貌した。

大阪の如くコンパクトで、人口の集積度が高く、公共交通が高度に設計、管理されておれば、府と市を統合しても業務の為の移動に支障はない様に思う。

一方、IT革命は、本来役所仕事的、定型的なルーティーンワークの効率を飛躍的に上げるとされて来た。体制が変わり、公務員の意識もそれに併せ変革出来れば、役所の中のIT革命が本格稼働し、生産性が革命的に上昇するのではないだろうか。

結果、従来に比べコンパクトで高機能な行政組織が機能する事になり、経費の革命的な削減と、柔軟で素早い意思決定と実行がなされる事となる。

勿論、組織、業務の統合で多くの雇用が失われ、更にITの活用で人的効率が上昇し、雇用問題に就いて言えば火に油を注ぐ結果になるが、ここでは敢えて議論しない。

この好ましい変化はこれだけでは終わらずに、次の更なる変化に向けて連鎖反応すると思う。

先ず、第一は地方行政のあるべき姿との評価が確定し、チュニジアのジャスミン革命の如く瞬時に日本全国に拡大する展開である。

次に、大阪府と大阪市の行政の統一によるマネージメントライン(命令系統)の短縮;

選挙前:国→大阪府→大阪市→区
選挙後:国→大阪都→区

上記で、大きな合理化の成果が得られたとしたら、当然次のステップとして、新たに誕生した大阪都に高度な自治権を与え、外交、国防、安全保障など以外の行政に就いては一定の国のガイドラインの下、大阪都→区に簡略化される動きになると思う。これには徴税権の一部委譲も伴う展開となるはずである。

これに伴い、2点のメリットが期待出来る。

先ず、第一は更なるマネージメントラインの簡略化による、行政組織の簡素化とそれに伴う経費の削減。

今一つは、大阪都が半ば独立採算化する事で、国への依存を断ち切り自ら稼ぐ姿勢に転換する事である。

飽く迄一例であるが、大阪府立大学と大阪市立大学を合併し、新たに大阪都立大学を設立し大阪大学と連携して地元のパナソニックやシャープと産学協同を深化させ、行政として必要な支援を提供すると言うスキームはありではないだろうか?

具体的には一昨日の記事で提案した、下記の様な支援である。

次の可能性は、徹底的に要素技術の研究開発に特化する事である。中国と中国に雁行する新興産業国の研究開発センターを目指すと言っても良いかもしれない。
この場合大事なのは、優秀な外国人研究者、技術者をリクルートし、日本人と競わせ活性化させイノベーションに誘導する事である。外国人研究者、技術者の招聘の為には年収だけでは駄目で、家族が安全に気持ち良く生活出来る公園、緑の多さや、治安の良さ、充実の医療と言った住環境が重要と思う。この意味、企業と地方自治体の提携がキーとなる。

又、高度な自治が与えられれば、東大阪市の地場産業の様な所と提携し、下記もある程度可能になる気がする。

今後、日本が財政規律回帰に向かう中で社会保障費削減は不可避である。従って、若年層の生活保護受給者に対し、健康上特段の支障、問題が無ければ低賃金ではあるが、就業を保証する代わりに生活保護を打ち切るとか、年金の支給開始年齢を遅くし、代って就業を保証する等して人件費を低減出来れば可能ではないだろうか?併せて社会保障費も減額出来るので一石二鳥なのだが。

上記が想像出来る体制の変革による取敢えずの果実である。兎に角、諦めるのではなく、東京に追いつけ追い越せで頑張れば、今迄とは違った展開になるはずである。

更に、大阪新都民が改革のメリットを実感として体験し、変革に自信を持てば、次のステップとして国と地方の業務の重複の見直し、詰まりは予算を伴っての国の出先機関の地方移管を強く要求するはずである。

税と社会保障の一体改革は決して間違いではないが、これは露骨に言えば増税と社会保障の削減をパッケージで行うと言う、痛みの国民への丸投げに過ぎない。国民の理解を得る為には公務員改革を中核とする行政改革を先行して行う必要があり、非効率な国の出先機関の地方移管はその一丁目一番地と考える。

最後に、明日の大阪ダブル選挙は改革を主張する橋下氏vs全既存政党と言う図式である。日本国民はこれまでの所、既存政党に不満を持ちながらも忍耐強く支援、応援を続けて来た。

しかしながら、明日橋下氏が圧勝する様だと、政党の時代は終了し、代って、信念に裏打ちされた強い個性を持つ政治家のリーダーシップによる政治の時代の幕開けを告げる事になると思う。

山口 巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役