今週のテーマは地球温暖化。これについてはアゴラでも何度も論じたので、簡単におさらいしておきましょう。
- 人為的温暖化説には疑問がある:地球が長期的に温暖化しているかどうかは疑わしく、それが人間の排出する温室効果ガスによるものかどうかはもっと疑わしい。最近では宇宙線によるものとする説も、査読つき学術誌に出ている。
- 温暖化の防止は社会的損失になる:地球温暖化が人為的なものだとしても、それを防ぐことはきわめて困難であり、Economist誌なども指摘するように、成長率の低下などのコストは(あるとしてもわずかな)温暖化防止のメリットをはるかに上回る。したがって温暖化防止は、社会にとってマイナスになる。
- 排出権取引は非効率的である:温室効果ガスを削減する方法として、排出権取引は広範な統制経済を必要とし、国際的な取引が困難である。炭素税のようなピグー税のほうが好ましいと多くの経済学者が提案している。
- 地球温暖化は優先順位が低い:コペンハーゲン会議で世界の経済学者が合意したように、地球温暖化対策の優先順位は多くの地球的アジェンダの中で最低である。温暖化の被害が出てくるのは50年後なので、緊急度も最低。
地球温暖化についての錯覚は、原子力とよく似ています。重要なのは、地球環境ではなく人類の幸福を改善するためにどういう政策に予算を使うべきかです。幸福の尺度は目的関数に依存しますが、人命を基準にすると圧倒的に重要なのは感染症で、その次は水などの公衆衛生。この基準でみると、地球温暖化の優先順位は最低です。
同じように原子力も、人命を基準にすると石炭火力のほうがはるかに危険だという点で、世界の専門家がほぼ一致しています。したがって今の日本のように原発を止めて石炭火力を稼働させると、健康被害は増える。原子力がとてつもなく危険にみえるのは、目の前の事故だけを見ているからで、多くのエネルギー技術を対称的に扱えば、原子力のリスクも環境負荷も最小です。
地球温暖化は、それだけを取り上げると深刻な問題に見えるでしょうが、飢餓や戦争など、もっと深刻な問題は世界にたくさんあります。稀少な政策資源を何に配分するかは、第一義的には経済問題であり、この観点からみると地球温暖化の防止は人類にとって損失になるおそれが強い。したがって日本が京都議定書を脱退するのは、人類のためにも望ましい行動です。
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