カジノ合法化に向けた論点整理 --- 木曽 崇

アゴラ編集部

いよいよ民主党ワーキングチームにおいてカジノ合法化に対して「合意」という形で一定の方向性が示されたわけですが、これから国民的なカジノ合法化に対する論議を行うにあたって、専門の立場からぜひ論点を整理させて頂きたいと思います。

【参考】カジノ法案、早期提出を確認=民主部会 (時事通信)


論点1: 我が国においてカジノ合法化を容認すべきかどうか

カジノ合法化によって謳われているメリットは大きく、

・ 投資誘因
・ 観光振興
・ 雇用創出
・ 新たな税財源の確保(カジノ税)

の4つです。一方で発生しうるとされる主なデメリットは、

・ ギャンブル依存症の誘発
・ 犯罪の誘引(治安問題および組織犯罪の関与)
・ 青少年に対する悪影響

の3つです。我が国においてカジノを合法化を容認すべきか否かという論議には、このメリット、デメリットの両者をしっかりと把握した上での冷静な価値判断が求められます。メリットだけを前面に押し出した賛成論であるべきではないですし、一方でデメリットだけに反応したヒステリックな反対論も好ましくありません。これは、メリット、デメリットを勘案した上で、どちらの道を選ぶのが我が国にとって総合的に有用であるかを問う「選択」の論議なのです。

論点2: 特定地域においてカジノの導入を容認すべきかどうか

上でご紹介した論点としばしば混同されがちなのが、特定の地域を対象としたカジノの導入を容認すべきかどうかという論議です。「カジノをやるなら沖縄であるべき」だとか「被災地におけるカジノ構想には反対する」だとか、世間ではすでに特定の地域を対象とした様々なカジノ導入論が展開されています。しかし、これと第一の論点である「我が国でカジノ合法化を容認すべきか」を混同すると、論議が非常にややこしくなってきます。

前者はあくまで我が国全体としてカジノという存在を許容してゆくべきかどうかを問う国策的論議、一方で後者は特定の地域にとってカジノが「相応しいかどうか」を問う地域政策的な論議です。今後、巻き起こってゆくであろう論議をスムーズに進行するためにも、この2点は意識して論議を切り分けて頂いた方が宜しいかと思います。

繰り返しになりますが、現在すでに民主党ではカジノ合法化に向けて前向きな検討を行うという基本的な方針が政策調査会の中のワーキングチームで確認されています。同時に、自民党政務調査会においても内閣部会と国土交通部会の合同部門会議の中で同様の論議が行われています。与党および野党第一党の中で、同様の論議が行われているわけですから我が国のカジノ合法化の可能性は、これまでと比べて格段に上がっていると言えるでしょう。

ただし、私はこの業界のいち専門家として、全国民的な論議なくしてこのような案件を前に進めるべきだとは思っていません。是非、皆さんの積極的な論議参加をお願いしたいと思います。

木曽 崇
国際カジノ研究所 所長

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