これは秋元康さんの言葉です。止まっている時計は、時間の方がが追いかけるから1日に二度は時間がピッタリ合う。一つのことをやり続けていれば、いつかは時代の方が追い付くという格言です。秋元さんがプロデュースされているAKB48もそうですが、この言葉に最も適応するのは芸能分野、とりわけお笑いの人たちです。彼らは下積み時代から同じネタをやり続けますが、テレビでの露出といったブレイクスルーポイントを迎えると一気に人気が爆発します。かなり前に「ゲッツ」でブレイクしたダンディ坂野さんもブレイク前も、ブレイク時も、そして現在も同じネタをやり続けています。
これは新しい研究分野や事業体にも同じことが言えると思います。技術やセンスは優れているのだけど、なかなかマネタイズしにくい研究や事業も、ひょんなきっかけでブレイクスルーポイントを迎えると爆発的な産業へと成長することがあります。例えばgoogleもそうですね。検索技術は世界最高峰でも当時は“検索はお金にならない”として国内のラボは次々と検索技術から撤退、主要プレイヤーは検索サイトのポータル化へ注力しました。しかしその後、リスティング広告という超絶マネタイズスキームを編み出したことから、googleの快進撃が始まります。
また、クックパッドも社長個人が“毎日の料理を楽しみにすることで、心からの笑顔を増やす”という理念を掲げて開設したサイトです。立ち上げ当初からアクセスを集めるものの、マネタイズが伴わなかったため、検索エンジンの上位に上がらないようにするという真逆のSEOをしていたと言います。今でこそ食品関係のナショナルクライアントとのタイアップを行い、非常に利益率の高い事業となっていますが、創業社長がアクセス解析ツールも使えなかった頃から膨大なログを手作業で集計してユーザービリティの向上に努めた結果だといえましょう。
止まっている時計”の考え方は、一つのことへ注力し続けるというのとともに、簡単には有り様を変えないという姿勢につながります。秋元さんも、AKB48の世界展開については以下のように語っています。
例えば、納豆を輸出しようとすると、納豆は多分欧米人にはその臭いや糸を引くのが腐ってるように見えてダメだろうなと、色々加工をして納豆を輸出する。それでは売れないと思うんです。僕は、AKB48は納豆は納豆のままでいいと思っています。こんなに臭くて糸が引いてて・・・と、ありのままを伝えると、みんな恐る恐るなんだけど、濃いコンテンツを面白がるんですよ。
近頃、ITの分野ではそのまま輸出して大ヒットする動きがあります。たとえば、iPhoneの写真共有アプリ「Snapeee」。同種のアプリでは世界的に有名な「Instagram」が有名ですが、こちらがアーティスティックな写真加工機能がついているのに対し、「Snapeee」はプリクラのようにデコることが出来きます。日本のデコ文化がアジア圏に受け入れられ、台湾、香港、マカオでは「Instagram」を抑えて無料写真共有アプリ1位となりました。そして、25日間で100万DLを突破した同種のアプリ「DECOPIC」も80%が海外からのダウンロードだと言います。
ネットのみならず、アパレル分野で成功しているのが「satisfaction guaranteed」です。Facebookファンページのいいね数が78万を超えており、ほとんどが海外からのアクセスになっています。ファンページ開設当初からアジア展開を狙い、消費者へ向けて英語でcooljapanのメッセージを届け、市場性があると見るや一気にアジア市場へと打って出ました。現在はシンガポールに拠点を構え、さらなる市場拡大を狙っているようです。
現在は、プログラミングの知識さえあれば、アプリマーケットストアを通して、すぐに世界市場に自分のプロダクトを問うことができます。小売業種でも、Facebookページを活用すれば、第2の「satisfaction guaranteed」になれるかもしれません。グローバル化は、それぞれの「止まっている時計」を持っているプロデューサーや事業化たちに対して、有利に動いているように思えます。
村井愛子(@toriaezutorisan)
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