“自分のアタマで考える”ためには―@toriaezutorisan

村井 愛子

アゴラをご覧になられている多くの方がそうだと思うのですが、私もブロガーのちきりんさんが好きです。ちきりんさんのブログは、“視点が固有で”“データや世の中の事象をその固有の視点で切り取り”分かりやすく解説してくださっています。


先日、ちきりんさんの著書「自分のアタマで考えよう」を読みました。世の中に蔓延するもっともらしい知識人たちのコメントや言論に惑わされることなく、いかにして“自分のアタマで考えるか”を具体的な方法論が書かれています。

私も「ほぉ、へぇー」と感嘆のため息をつきながら、読了させていただきました。ここで、最後のまとめ部分から二つほど引用しながら、ふと思ったことを。。

○まとめからの引用
“いったん「知識」を分離すること”=もともと知っている知識は、考えることを邪魔する
“知識は「思考の棚」に整理すること”=補完情報が入った場合に結論づけられることを事前に考えておき、補完情報が入るべき棚を意識しておく

この二つの作業をするには、

1.いったん情報を全体で捕えて(ズームアウト)から、分析ベースと事実ベースに仕分けし、
2.気になる事実ベースの数値を検証し(ズームイン)、
3.「思考の棚」のデータベースを洗って、補完情報を組み込んだ結果、自分で考えた結論が出る(アウトプット)

という一連の手順が必要になるかと思います。この、一つの情報に対して「ズームアウト」→「ズームイン」→「アウトプット」をするには、情報をストラクチャで捉えることが必要になるのですが、意外とコレが難しいと思うんですよね。構造で把握していないと、本書にも書いてあるように議論のレベルがズレて「かみ合ってない議論」に成り得ます。
ではストラクチャで対象をとらえるには、どうしたらいいかを考えてみました。

1.算数をやる
2.たくさん物語を読む

1番目はいわずもがななのですが、算数は

1.いったん問題を全体で捕えて(ズームアウト)
2.方程式を解くのに必要な数値を抽出し(ズームイン)
3.ストックされた方程式に当てはめて答えを出す(アウトプット)

という手順を踏んでいるので、数学的考え方が出来る人というのはおのずとストラクチャで考える脳になっていると思うのです。

しかし、私も含めて世の中には算数嫌いな方も大勢いらっしゃると思います。私がストラクチャで物事をとらえるために、役立ったと思うのは物語を読むことです。

たとえば「アンナ・カレーニナ」というロシアの長い小説がありますが、登場人物が多い上に物語が多重層になっていて、何度でも読むことが出来ます。主人公は表題になっているアンナという女性ですが、他にもたくさんの登場人物が登場してそれぞれの主張をしながら、たくさんのカオスを含んだ話が展開していきます。どの人物にフォーカスするかによって、何度読んでも物語のとらえ方が変わってくるのです。このような繰り返し読むことが出来る物語は、

1.いったん物語を読了して全体で捕え(ズームアウト)
2.繰り返し読んでも新たな発見があり(ズームイン)、
3.その都度異なった感想を持つことが出来る(アウトプット)

という行程になっていると思うのです。別に古典じゃなくてもいいと思うのですが、残念ながら日本の小説は結末を筋として追って結論づける推理系小説が主流のため、こういった類の物語は少ないように思えます。最近流行っているケータイ小説も、ただ筋を追うだけの単純構造になるため、もっと「物語」がたくさん世に出てこないかと思っているのですが・・・。

村井愛子(@toriaezutorisan)

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