電子の時代になったのに気づかない人たちへ

松岡 祐紀

マジンガーZ好きのアルゼンチン人の友人(26歳)がいる。また毎日ドラゴンボールを見ているフランス人も知っている。村上春樹は「ねじまき鳥クロニクル」よりも「海辺のカフカ」のほうが好きだと語るタイ人の友人もいる。

このように日本は世界に誇るコンテンツを持っている。

では、出版社の仕事とは何だろうか?彼らの仕事は「本という形」を守ることなのだろうか。違う、彼らの仕事はこれら世界に誇るコンテンツを生み出す手助けをすることだ。優秀な編集者のおかげで世に出た作品も数限りなくあるだろう。(参考リンク:編集者の仕事とは?

その他のことは本来ならば、些細なことにしか過ぎない。今でこそ本がすべて電子書籍に取って代わる過渡期だが、いずれはすべて電子書籍になることは間違いない。それならば、どうして出版社の意向に沿って、人気作家の方々が自炊代行業者に難癖をつけているのか自分には理解出来ない。(もちろん、紙の本のすべてがなくなるとは思わないが、電子書籍が販売プラットフォームとして主流になることは間違いない)

彼らはほかにもっとやることがあるはずだ。


アマゾンやアップルにいいようにやられっ放しでいいのだろうか?このままでは販売経路も外国企業に抑えられ、ゆくゆくは作家たちは出版社を飛び越えて、個人でアマゾンなどと契約するだろう。それを指をくわえて見ていたいのだろうか。

自分たちが既存の本という形以外に、一向に有効なプラットフォームを提示しないのに、自炊代行業者を責めても仕方がないのになぜ気づかないのだろう。自炊代行業者は所詮はすき間を埋めるだけのビジネスで、いずれは自然淘汰されていく。それを加速度的に早めるためには、もっと積極的に電子書籍化に出版社が自ら打って出ないといけない。(出版社がデジタル化などの二次使用権を抑えていないために、彼らが積極的になれない事情も理解している。電子化に関しては、旧来の印税の倍、あるいは三倍払っても余計な経費がかからないのでその分お釣りがくるのでは思う。現にアマゾンは売上の55%という高いロイヤルティを各出版社に突きつけている)

出版社の仕事は「ただ本を売る」ことではないはずだ。彼らが一致団結して販売プラットフォームを作れば、逆に高いロイヤルティを得ることが出来る。作家と出版社のWINWINの関係を作るには、そこにアマゾンなどの「本をただ売る販売業者」を介さないことが必須条件になる。

現在の作家に対する印税は諸説あるが、10%だと仮定すると、三倍払ってもわずか30%にしか過ぎない。残り70%が出版社の取り分にすることも今なら可能だ。

特に漫画は今すぐにでも翻訳して電子書籍化すれば、世界に売れるコンテンツだ。電子書籍化すれば、市場は日本だけではなくなり、世界に広がる。今、海賊版が幅を効かせている世界の漫画市場に出版社自らが乗り込むことによって、彼らを淘汰することも可能だと思う。(そのためには、なるべく安く「ただに近い価格」まで価格を下げることが必須だが)

作家の仕事は、いい文章、いいストーリーを練り上げることであり、出版社の仕事とは「本という形」にこだわることではなく、彼らの仕事をより良い形で世に出すことだ。紙の時代は終わり、電子の時代になった。そのことをいつまでも無視して余計なことに頭を突っ込んでいる暇があれば、もっと良質なコンテンツを作ることに専念して欲しい。

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