週刊現代暴走の背景

山口 巌

松本氏の記事、中田宏さんを陥れた人達を糾弾し、政治家としての彼の将来に期待するを拝読。随分と酷い話である。しかしながら、疑問に感じたのは、一体何が週刊現代をかくも暴走させてしまったのか?という暴走の背景である。


人間追い詰められると、窮鼠猫を噛むではないが、暴走し自爆に至るケースが多い様に思う。

発行部数を調べてみる

元木昌彦編集長時代の1995年に150万部を発行して、幾度かの絶頂期を迎えたが、その後は後退を続け、2005年の発行部数は717,756部と週刊文春、週刊新潮に次いで第3位。更に後述するような話題性重視の誌面作りを行っても部数は回復せず、2006年下半期(7月から12月)の平均発行部数が約41万5000部、2007年上半期(1月~6月)はスクープ記事を連発したにも関わらず、更に減って約34万9000部(実売部数)とのデータが発表されている。実売部数においては、1989年には約60万部、1992年には約50万部に減少したが、1995年~1999年の元木編集長時代には約70万部を売り上げた。しかし、2001年には約61万部と1989年の水準にまで下がり、2008年上半期の実売部数は26万4389部に、2008年下半期はさらに約1万5千部減少の24万9931部へと相次いで減少したと発表されている

見事なまでの右肩下がり、ジリ貧、先細りの典型である。

雑誌の販売収入減少は簡単に理解出来るが、落ち目の媒体に広告は集まり難い。広告収入の落ち込みは更に惨憺たる結果になっている筈である。

結果、予想されるのはリストラと経費削減。要は思う様な取材など出来る筈もなく、記事は陳腐化し発行部数は減り続けると言う、雑誌に取っての「負のスパイラル」そのものではないだろうか?

飽く迄推測であるが、一発逆転を狙い今回の如く事件を捏造したのではないか?

30年程前、ある鉄鋼メーカーの総務部長と懇意にさせて戴いた事がある。仮にA部長とさせて戴く。兎に角、今回の週刊現代と週刊ポストの関係者(多分編集長と思う)とは良くゴルフに行っていた。勿論、A部長の勤め先の招待である。

一度、理由を尋ねたら、「週刊誌は何をするか判らないので、眼を光らす必要がある」という答えであった。

広告の入らない閑散期には、依頼されて適当に出稿していた様に記憶している。

考えてみれば、この時代は週刊誌に取っては良い時期だったと思う。人々は新聞やテレビでは得られない情報を求め週刊誌を購読した。そして、週刊誌さえ押さえれば、新聞、テレビは電通が何とかしてくれると言う事で、企業が広告出稿含めそれなりに面倒を見てくれたのではと思う。

しかしながら、インターネットが状況を180度変えてしまった。

週刊誌は、今やマイナーでニッチなメデイアでしかない。

このまま、無策を継続すれば「野垂れ死に」である。経費のない所で、売らんが為の記事捏造に走れば今回の如く「自爆」となる。

大事な点は、かかる状況は決して「週刊現代」固有の問題ではなく、雑誌は須くそうであろうし、オールドメデイア一般に多かれ少なかれ共通していると思われる所である。

正に、崖っぷちに立つオールドメデイアと言う所ではないだろうか?

そして、残念な事にネットは未だ揺籃期であり、オールドメデイアに取って代れる状況ではない。ジャーナリズムの不在である。

我々は、劣化し朽ち果てようとするオールドメデイアと、成熟に時間がかかるであろうネットの間に呆然と立ちすくんでいるのではないだろうか?

山口巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役