米国ブルッキングス研究所の報告を参照したこの記事が、実に興味深い。
世界の大都市圏で最も経済成長している10都市とは、中国の上海を筆頭に中国が5都市、他にトルコがイズミール、アンカラ、イスタンブールの3都市、サウディのリヤド2位、ジェッダが3位となっている。日本を含めた欧米先進国の都市は何れも低迷している。
この背景にあるものは一体何であろうか?日本を例に考えてみる。
矢張りここ20年以上に渡り、廉価な労働力を求め日系企業の中国進出が加速した事が大きいと思う。結果、まるでブラックホールの如く、中国は日本の資本、技術そして人を吸い込んでいった。
結果、中国の都市は飛躍的な発展を遂げ、日本の都市は沈滞化した。
このブログが示す通り、縫製業の如き「労働集約型」の産業は日本から姿を消そうとしている。
縫製業に拘わらず、コールセンターやHPの作成も事情は同じ事である。「バックオフィス」業務は安い人件費を求め日本から逃避するのは確実である。
それでは、中国経済の活況が継続し人件費が高騰すれば日本は一息つけるのであろうか?
全くそうは思わない。
鞘取りを求め、中国に比べ遥かに人件費の安い、例えばベトナムに中国からの移転が加速する筈である。
数年後には、同様ブルッキングス研究所の報告書は、中国都市の凋落とベトナムのハノイ、ホーチミンそしてダナンの躍進を伝える筈である。
そして、更にはベトナム都市の凋落とミャンマー都市の活況という具合に鞘取りの連鎖継続はそう簡単には終わらない。
中国に雁行する新興産業国の発展とは、正にこういう事の筈である。
これを、指を咥えて傍観していては、日本は抜け殻になってしまうと思う。
朝日新聞が31年ぶり貿易赤字を伝えている。
日本企業が安い人件費を求め、海外に進出し、サプライチェーンを確立し、製品を国内に輸入すれば当然貿易赤字は拡大する。
そして、雇用問題が重篤化するのは確実である。
結果、企業の海外逃避で法人税の徴収が先細りするのみならず、所得税、住民税を負担する人間も減少する。従って、「消費税増税」という発想かもしれないが、現在の如く根本問題に無策であれば、「焼け石に水」ではないのか?
政治は根本的な問題解決には決して至る事のない、対処療法を政局にして少しも前に進まない。
しかしながら、肝心な事は根本的な問題の凝視と解決策の策定ではないのか?
山口巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役