システム会社は、技術をできる限り排除して誰でもできるように落とし込み「人海戦術」を採る方針で来た結果、素人以下の技術力しかなくなっているというお話をしました。その続きです。
■開発工数1人日で処理時間2秒と、開発工数2人月で処理時間2時間の違い
技術を排除すれば、単純な処理の繰り返しで処理するほかありません。前回、「等差数列の和」のプログラムについて書きましたが、例えば「1から10億までの合計」を求めるとしても、単純に10億回足し算をすれば答えは出ます。しかし、公式を利用するよりも数千~数億倍の処理時間が掛かります。クリックしてから時間が掛かるプログラムというのは、同様に、何の工夫もせず、技術も使わず単純処理を繰り返しているから遅いのです。
遅いだけではありません。技術を使わない単純な処理の繰り返しでは、どうしてもプログラムが長くなり、仕様書(設計書)も長くなります。一つ一つは単純でも量が膨大になり「卵が先か鶏が先か」は分かりませんが、「人海戦術」を採用せざるを得なくなるわけです。
さらには、人海戦術のためコミニュケーションギャップが生まれ、それを解消するためのドキュメントと会議が増えます。増えたドキュメントの整合性を取るための作業が生まれ、更に人が必要になる悪循環になります。もちろん、それに応じた「膨大な開発費」が必要になります。
悪循環に陥れば、1人ですべてを読むことは不可能な量のドキュメントが作られ、誰も全体を把握していないという事態となります。その結果、特許システムのように破綻してしまうことは決して珍しくありませんし、少し技術があれば1日で作れて数秒で処理できるようなプログラムに「開発に2ヶ月も掛け、処理時間が2時間も掛かる」ようになるわけです。
■技術のないアマチュアをプロとして使うことが問題
要するに技術を軽視してアマチュアをプロとして使ってきたことが問題です。その背景には、図1の様な意識が濃厚に影響したでしょう。
多くのシステム会社が「単価の高いコンサルなどの上位を占めるべき」と考えるのは当然の戦略で、コンサルに必要な「業務知識」や「経営戦略」を求めるように傾倒していくのは仕方がないのですが「技術を軽視」したところに問題があるわけです。
ゼネコン構造では上位に合わせざるを得ない。弊社の様に、上位企業にケンカを売り、上位企業が転けたとき技術でケツを拭く中小企業には多少なりとも技術は蓄積しましたが、上位企業に逆らわないで、「人を出すだけ」の中小企業には技術は蓄積しません。
つまり、「技術力は必要ない」と考えた上位企業に合わせた結果、システム業界のほぼ全体に「技術力がない」ということになってしまいました。
技術を避ける言い訳として「そんなトリッキーなことをすればメンテできなくなる」というのも多いのですが、前々回書いたように、ユーザーレベルの問題すらできない人達ですから、メンテができないのも当たり前。メンテができないのではなく「技術力がない」のです。
■システム業界は変革時期
システム業界、つまり、業務システムを作ってきた業界は大きな変革時期に来ています。
私はシステム業界で飯を喰ってきた人間として、なんとかして「内部から当然の状態まで改革したい」と考えてきましたが、私と同じように「業界を変えたい」と考えていた人達のほとんどは、システム業界からは去ってしまいました。現在のシステム業界は、完全な衰退期の斜陽産業ですから、優秀な人が去るのは当たり前の話です。
しかし、変化は非常なスピードで進んでいるため、近々、素人以下ばかりの巨大システム会社も、システム業界ではない「(Googleなどがいる)IT業界」に方向転換することになるでしょう。その方向転換に失敗して潰れてくれたら良いのですが、成功しないまでも残ってしまえば「技術力は要らない」と考える人が、新たなIT業界の上位に居座ることになりかねません。
その様な事態になれば、日本のシステム業界ではなく、日本のIT業界の終焉になるのではと危惧しています。
技術力がなくても看板で人を集め人海戦術を使っても作ってくれる会社と、少数精鋭で技術力で仕上げようとする会社どちらを選択するべきか、リスクを考えると図2の様になります。
技術力がない会社を選べば、結果としてリスクが避けられないばかりか、巧くいっても「高くて遅い」システムしか手に入りません。それを分かった上で、できない人が多くて「メンテできなくなる」とうシステム会社の言い訳を受け入れているのでしょうか?
私はそうは思いません。おそらく、システム会社に唯々諾々と流されているだけではないでしょうか。
もし、そうであれば、是非、システム会社のスキルをチェックしてみてください。担当者に上記の問題を解いて貰うだけで分かります。※ 解答が欲しい方はメール([email protected])にて。素人以下のシステム会社に会社の運命をゆだねるべきではありません。
お客様から「技術がないのは詐欺だろう!」と声を上げて頂ければ、不当に高い費用を取られることもありませんし、声が大きくなれば業界が変わり、特許システムのような不幸も防げます。
お客様が「技術」を選んでくれれば、変革時期の業界は変わることができるのです。
生島 勘富(イクシマ サダヨシ)
株式会社ジーワンシステム
代表取締役