清盛たちをぶっ潰せ!

国民的番組のはずの大河ドラマ『平清盛』の視聴率が第5回ですでに16.0%しかない。だが、その低視聴率さえ、世間で話題にならない。このままだと、『花の乱』(94年、平均14.1%)や『竜馬がゆく』(68年、14.5%)さえも割り込み、前半にして歴代最悪に落ち込む。まして後半は、清盛の所業からして、もっと率が悪くなるにちがいない。


どうせテレビマンたちの浅薄な発想だ。武士の時代を終わらせた龍馬が当たったから、貴族の時代を終わらせた清盛で行こう、くらいのものか。だが、清盛がどうやつだったのか、よく知らなかったのだろう。貴族の時代を終わらせると言ってのし上がりながら、いったん地位を握ると、自分自身はもちろん身内ばかりを貴族にして、他の武士たちを権力と武力で弾圧しまくり、それでかえって時代を戦乱へと混迷させ、一族もろともまで滅亡させた。同じ武士から貴族になったにせよ、長引く戦乱を収拾し、徳川へと続く四百年の平和の礎を築いた秀吉とはわけが違う。

今の時代、こんな清盛みたいなやつらがあちこちにいる。山猿のような田舎者のくせに、若い頃から赤にかぶれ、財閥解体・天皇打倒を叫びながら、主義のためと偽称して周囲の仲間を搾取しまくり、いつの間やら自分自身が小天皇になって、世襲王朝を開いてしまった連中。なんだ、ありゃ? だったら、最初から、余計なことなど言わなければよかったのに。

産業界はもちろん、学術や芸術、文化まで、戦後のどさくさでできた「名門」ばっかり。だいいち、いまの政権からして、清盛そっくり。自民党の官僚政治を終わらせる、と言って出てきたが、自分たちが自民党に取って代わっただけ。選挙公約なんか知らんぷりで、政策や態度まで自民党のものをまるまる引き継いだ。さらにタチが悪いことに、内実は全学連の残党だらけで、バックに官公労みたいなのがくっついているから、以前にも増して政府と役人を肥大させ、増長させ続けている。

いま、時代の敵、守旧派の正体は、貴族でもない、武士でもない、財閥でもない、天皇でもない。まさに清盛のような、チンピラ無法者、インチキ詐欺師の成り上がり、成り代わり連中だ。やつらは、伝統も無いから礼節も無い。教養も展望もない。保守と革新のダブルスタンダードを好き勝手に使い分け、目先の利益で軽挙妄動して、口先方便のやりたい放題。幕末維新、明治戦前の時代のリーダーのように、身を捨てて天下国家として生きることなど、はなからムダとバカにしきっている小人物たち。

どこぞの製紙会社、どこぞの電力会社のトップたちを見てみろ。オレって頭いい、なんて思っているやつほど、バカはいない。清盛のように、うまく立ち回って天下を取ったように見えても、足下から崩れまくり、先人たちが苦労して築いてきたすべてまでをも失う。いまだ表沙汰になってはいないが、そんな会社や組織は、この国にごろごろしている。なんとかツケを先送りして、見せかけだけの権勢を誇ってはいるが、もはや時間の問題。最初から古い連中のお仲間に入れてもらう気もない頼朝や龍馬、西郷のような本物の武士、本物の志士が挙兵したら、ひとたまりもあるまい。

維新とは、縦糸を断ち切ること。これまでの経緯や恩讐を一刀両断にすること。とはいえ、二世、三世も、バカばかりではあるまい。一代で財をなした功績はともかくも、親たちの人間としての浅ましさにはウンザリしているという者もいるだろう。身代を潰しても、時代を変えるようなウツケ者こそ、期待の人物。さあ、今日が建国の日だ。

by Univ.-Prof.Dr. Teruaki Georges Sumioka 純丘曜彰博士
(大阪芸術大学哲学教授、元テレビ朝日報道局『朝まで生テレビ!』ブレイン)