橋下平成維新軍「船中八策」太鼓の乱れ打ち --- 松田 宗幸

アゴラ編集部

大阪維新の会が3月開講する「維新政治塾」の塾生に、3000人を超える応募があったという。橋下人気に擦り寄った現象だが、その後、発表された衆院選マニフェストには応募者は驚いたのではないだろうか。次期衆院選に向けて作成している事実上の政権公約「船中八策」には首相公選制の導入を盛り込まれている。公選制は代表の橋下徹・大阪市長の持論であるが、経済財政政策では「使ったものは全て経費にし、税金をかけないくらいの発想で、とにかくお金を使ってもらう」とし「使い切り」の人生モデルに転換するという。


社会保障制度改革では、所得の再分配機能を強化するため、掛け捨て型の新年金制度を導入。受給開始時に資産のある人には支給せず、経済的に苦しい人だけが受給できる制度にする。税制改革は、資金の流動性を高めるため、資産課税を強化。利子や所得への課税ではなく金融資産高そのものに対する金融資産税の制定ということだろうか。所得税の源泉徴収制度は廃止し、サラリーマンも含めて全ての国民が確定申告する制度に変更するという。これは「新自由主義」というよりも国民の資産管理は国家および地方が行う「共産主義」と呼ばれるものに近い。

人間の一生における消費性向では、若年から定年前までは購入したいモノや購入したい欲もあり、人生設計上、消費をこなす目的そのものがその世代間にはある。しかしながら高齢者にそれほど旺盛な消費を求めることには多少無理がある。子どもの社会では、運動が出来たり喧嘩が強い子どもはいじめにあうことはない。勉強だけが出来て運動ができない子どもはいじめにあう。そして勉強が出来て運動ができないが、資産家の子どもはたかりにあう。また駄菓子などをご馳走してくれる資産家のお年寄りを子どもはすこぶる大好きだ。

この発表された衆院選マニフェストには、子どもがひとり暮らしの資産家のお年寄りにたかるかのような心理が透けており、まさに橋下平成維新軍「船中八策」太鼓の乱れ打ちの様相である。乱れ打ちは、前屈みになっている相手の周りに複数人が立ち、背中・腰などに皆でハンマーパンチを振り下ろし、叩き付ける長州力率いる昭和維新軍の代表的な連携技である(※編集部注:長州力はプロレスラー)。

戦後の日本は分権的特徴と中央集権的な特徴を兼ね備えた独特の混合経済体制を築き、日本型社会主義と呼ばれる事がある。欧米先進国からは「世界で最も成功した共産国」と賞賛または皮肉をもって呼ばれる事もまた事実である。空想論でなく現実論として「共産主義」の多くの潮流は、必ずしも明確な「経済理論」は持たないことは全ての歴史が証明してくれている。「船中八策」マニフェスト経済活性とお金の流動を図ったもなのだろうが、お金よりももっとも大切な明確なる国家観はあまり見られない。

「国民皆平等」的な空想論は非常に耳障りが良い。空想論では人間は生まれながらに「より平等になる権利」と「より自由になる権利」をもっている。しかしながら、成功の運をもたらすには、この手で掴み取りにいく意志と努力がなければ決して舞い降りることは無い。この空想的な指向性は、人間が成長したい意志を無くす流れとなり、経済成長への逆行現象を進行しうる。これをもって首相公選制の導入ならば、見事なる共産主義下での独裁が進行する事態をも形成しうる。その事態がいきつけば人間が「より自由になる権利」という生き方そのものを、奪ってしまうことになるだろう。

松田 宗幸(Muneyuki Matsuda)
株式会社 Mホールディングス