ギリシャの峠 --- 岡本 裕明

アゴラ編集部

実に時間がかかった第二次支援の決定でありました。私も支援は必ずある、と断言し続けていましたのである意味、目論見通りとなり一段落しましたが、後味が悪い決定であったことは事実です。支援側が最後通牒を突きつけるような形となり、ギリシャはがんじがらめとなってしまいました。

ではこのギリシャの峠の先には何があるのでしょうか?


少なくとも1週間や10日ぐらいは峠の下りでいくらかは楽になるはずです。ですがその先となると正直、私には霧が深すぎて良く見えません。個人的には平坦な道はまずないだろうと予測しています。そして、支援側に立っているEUも同じ気持ちだと思います。今週末の財務相会議からそのあたりの兆候は想定できるかもしれません。

私は今回の一連の支援に関して自分が債権者であればどういう行動をとるだろうか、と考えました。それは、現状と将来。現状は債権の損失を最小限にとどめることに専念するだろう、そして他の債権者と行動を共にし、共闘体制をとるだろうと。ですが、一旦ヘアカットが決定した段階で現在持つギリシャの債権は過去のものとなります。一方、将来的にそこに新規に投資をすることもまずないだろうと思います。

それはEUでもIMFでもECBでも同じだと思います。苦労をするのは真っ平ごめん、というスタンスです。私は北米でさまざまなディールを行ってきた中で相手の腰が引けてきたらこれを再度引き寄せることは至難の業だということを身にしみて感じています。

更に仮に同じような問題が他の国で起きたらどうなるか? 多分、ここまでのパッションを持って救済を行うことはないかも知れません。ギリシャは特例でした。EU側の初動判断にミスがあった点も否めません。

もう一つは「メルコジ」と揶揄されたメルケル首相とサルコジ大統領の二人三脚体制がフランスの大統領選挙の行方次第では崩れる可能性があり、これは今までの方針を維持することに大きな抵抗が生じることになります。

ですのでEUとしてはあらゆるオプションと将来に備えた対策が今回協議されたと認識しております。そしてユーロ圏を維持するためのベストなアイディアが今後、真剣に考慮されることでしょう。それが何時、どういう形で表面化するかはわかりません。しかし今回の一連のギリシャ問題を通じてユーロの構造的問題は十分すぎるほど見せつけられたはずです。

EUとして「同じ過ちを繰り返すほど愚かではない」と信じてよいならギリシャと同じように一時の休憩のち、平坦ではないユーロ維持のためのニュープランの構築を進めていくでしょう。これはもっと長い道のりになるかもしれません。ユーロ圏にとってユーロをそう簡単にギブアップしたくないというパッションは少なくとも今回の支援劇をみて十分伝わってきた気がします。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年2月23日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。