毎日新聞は大阪市営バス運転手の給与4割削減を伝えている。現在政界の台風の眼とも言える橋下市長の目玉政策であり、且つ「4割」と言う過去に例を見ない大幅削減である事から、今後、大規模な連鎖反応を予想する。
大阪市交通局は、民間バス会社より高額と指摘されている市営バス運転手の年収(平均739万円)について、来年度から4割程度削減する方針を固めた。「民間並みに合わせる」との橋下徹市長の方針に基づき、在阪の大手私鉄系バス会社の最低水準に引き下げる。交通局は週明けにも橋下市長の了承を得て労働組合に削減案を提示するが、労組の反発は必至とみられる。交通局によると、市営バス運転手は計約700人。平均年収(49.7歳)は、在阪大手5社(阪急、南海、京阪、近鉄、阪神)の平均(44.5歳、544万円)より195万円高い。しかし、バス事業は28年間、赤字決算が続いており、累積赤字は10年度で604億円に上っている
先ず第一は、橋下市長がこの給与4割削減に成功すれば、大阪市民のみならず、国民の多くが拍手喝采する事となり、橋下氏への支持率は上昇する。
更に他の部門の給与削減に手を付ければ、更に支持率は上がる。支持率が上がるから給与削減が可能なのか?或いは、給与削減を断行するから支持率が上がるのか?の議論は一先ず置いといて、大阪市役所職員全般の給与は大幅下落となる筈である。
何処まで下落するかと言えば、労働市場での市場価格ではないだろうか?
判り易く言えば、給与を削減していけば何処かの時点で市役所を退職し、転職する事になる。従って、理屈では、転職市場での年収まで下落を続ける事になる。
次いで、大阪都構想が橋下市長の目玉政策である事から、大阪府職員の給与も当然の事ながら、大阪市役所職員に鞘寄せされる事になる。
大阪府下各行政機関の職員も右に倣えであろう。
大阪に隣接する、京都府や兵庫県の首長も住民の激しい突き上げを受け、再選を望むなら橋下市長の政策を追随するしか手立はなくなるであろう。
結果、この動きは全国に飛び火し、再選を望む首長の「To do list」最上位にランクされる事になるのではないだろうか?
最後は国政に与えるインパクトである。
財政再建、債務問題解決の処方箋として、公務員改革を基軸とする行政改革に真正面から取り組む橋下市長と消費税増税一直線の野田首相のコントラストは余りに鮮やかである。
そして、国民がどちらを支持するかは議論を必要としないであろう。
最近、複数回の当選を誇る民主党の中堅国会議員と話をしたが、次回の選挙での落選を心配していた。
持家がある訳でもなく、落選したら今住んでいる議員宿舎を追い出されるのでホームレスになると自嘲していたが、当選一回の議員等は更に不安が大きい事であろう。
次回の選挙を考えれば、本音では、人気沸騰の橋下市長と同様の政策を掲げる総理総裁の下での選挙を希望するのは当然である。
野田首相足下の液状化が一気に進む様な気がする。
山口巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役