アゴラは論争の場としてつくったので、あまり気乗りしませんが、松本さんの記事に簡単にコメントしておきます。
気乗りしないのは、ここで書かれているのは学問的にも実務的にもとっくに決着のついた話だからです。ソフトバンクが900MHz帯がほしいのは当然です。山田さんも私も、ソフトバンクに割り当てるなと言っているのではない。国民の共有資産を得るのだから、相応の免許料を払えと言っているだけです。
900MHz帯がほしいなら、堂々とオークションに応札して最高価格を出せばいい。それが孫正義社長のお好きな「公正競争」でしょう。「今まで他の業者が払っていなかったのだから、われわれだけ払うのはいやだ」というのは話が逆です。払わなかったのがおかしいのだから、700MHz帯と一括して公正にオークションすべきなのです。
ところがソフトバンクが700MHz帯を申請しないと宣言したので、ここは3スロットの合計96MHz(時価約1兆3000億円)もの電波を、オークションどころか書類審査もなしに無料で既存3社に割り当てる史上最大のバーゲンセールになりそうです。
900MHz帯は「時間がない」という言い訳で押し通しましたが、全面的に空くのが2015年になる700MHz帯を電波法改正前に駆け込みで割り当てるのは筋が通らない。問題は個別企業の損得勘定ではなく、新規参入を促進して価格競争やイノベーションを生み出すことです。
今回の不透明な電波法改正は、アメリカ大使館も問題にしています。かつて松本さんがクアルコム日本法人の社長だったとき、3Gの談合に抗議して申請しようとしたように、外資が名乗りを上げるかもしれない。国民としては、せめて外圧によって競争が起こることを期待するしかない。情けない国です。