私は今回の消費税率引き上げは,財政赤字の問題を考えるとどうしても必要だと考えています。けれどもこれは,多くの人にとってそれなりの負担増になるとも考えています。
消費税率引き上げをするならば,同時に歳出削減を行ってもらわないと納得はできません。民主党政権になってからのばらまき分は,特に社会保障関係では必ず解消して欲しいと思います。痛み”分け”の政策が必要ですが,今回の改革は本当に”一体改革”になっているのでしょうか。
消費税率の引き上げでは,反対の立場から成長率の数値目標の明記が提案されています。ただ,これは現状の低成長率を考えると現実的な対応ではないでしょう。それ以上に,1%とか2%(額にして10兆円規模)の成長率が達成できても,5兆とか10兆円規模の消費税増税に対してはそれほど大きな違いにはなりません。
目標成長率を達成したとしても,消費税増税の負担は大きなものになるはずです。
少し変則的ですが,負担の本質をつかむために下で「就業者1人あたり」の消費税と所得税の額を示しました。(中央政府財政の決算,1980~2010年度)
なお,消費税は全ての人にかかるので,人口あたりの方が良いかもしれません。ただ,専業主婦や子どもの消費税負担は結局は就業者にかかりますので,退職世代の分だけ差し引けばいいと思います。(これが消費税の利点となります。ただ,退職者の年金は賦課方式なのでその財源はやはり就業者ですが。)
この図では,簡易的に2014度と2015年度の値を予測しました。2010年度のGDP,所得税,消費税をもとに,単純に消費税が8/5倍,10/5倍(消費税率8%,10%への引き上げによる。)して計算しました。
負担感は対GDPで示した方が良いでしょう。そこで,GDP(10億円)で割って比率のようなものを描いてみました。
驚くことに,バブル期を除くと就業者あたりの所得税と消費税の合計の負担率は,さまざまな制度変化や減税政策があったにもかかわらず,この30年間ほぼ一定だったことがわかります。
そして,2014年と2015年はこれまでの負担率から,かなり増大することが確認できます。これが経済や働く人々の行動に影響を与えないとは考えられません。(様々な影響が出るので,実際にはこれより低くなるかもしれません。単純な仮定であることには注意。)
それでも財政破綻のインパクトの方がずっと大きいので,消費税率引き上げには賛成せざるをえません。私の主張はそのかわりに歳出も何とかして欲しいというものです。特に民主党政権になってからの歳出増(http://blogos.com/article/12959/)は削減して欲しいと考えます。是非とも言葉通りの一体改革を!
岡山大学経済学部・准教授
釣雅雄(つりまさお) @tsuri_masao