鰯の頭も信心から、とはよく言ったもので、人間はどんなものからも教えを授かることがあります。特に迷いが生じているときはなおさらです。今日はそういう話をさせてもらればと思います。
リボルテックというフィギュアコレクションをご存じでしょうか。海洋堂というメーカーが開発したリボルバージョイントと呼ばれる、フィギュアの可動部分に用いる関節ジョイントパーツを使ったアクションフィギュアの総称です。
アクションフィギュアとは、固定的に作られてポーズを変えることができないフィギュアとは違って、ユーザーが好きなポーズをとらせられるように可変式に作られたフィギュアのことです。僕はとりたててフィギュア好き、というほどではないし、コレクターでもないですが、この海洋堂さんが仏像シリーズを発売中と知り、Amazonでうっかり大人買いをしてしまいました。(実は僕は仏像、特に仏を守る神々の造形がたまらなく好きなのです)
この仏像シリーズとは、仏法の守護神である四天王(持国天、増長天、広目天、多聞天)と、八部衆の一人 阿修羅の全五体の仏像を、上述のリボルバージョイントを使って可動型のフィギュアに仕立てたものです。このことをFacebookでも書いたのですが、ある方が残してくれたコメントを読んで、はたと気がついたことがあったので、いまここでBlogを書いています。
それは、彼らが起業家や経営者にとって(というより組織を率いる者にとって)必要不可欠な要素を体現しているということです。四天王は東西南北の守護をまかされており、どれも欠けるわけにはいかない重要な神々です。持国天とは国土を支える者という意味であり、会社でいえば総務や人事、財務などを意味すると思えます。増長天は成長し増加する者ですから営業系、技術会社なら開発系の部署といえるでしょう。広目天は広く見渡すこと、多聞天は多くのことがらを聞き分けることですから、共に広報やマーケティングなどの部署と考えればよいでしょう。つまり、仏法を普及させていくという啓蒙活動における重要な機能が四天王という形に置き換えられているということです。
ちなみに、もう一人、四天王とは別に発売されているのが阿修羅です。(2009年に東京国立博物館で催された阿修羅展にも行きましたが)興福寺の阿修羅像とは違って、このフィギュアでは荒ぶる闘神としての性格を強く押し出されたデザインです。興福寺の阿修羅が仏教に帰依してからの姿であるとすれば、フィフュアのほうはあくまで仏道を拒む鬼神の時代のそれです。彼は仏教に帰依するまでは、帝釈天に倒されても倒されても蘇り、さらに戦いを挑んだ神であり、まさに不屈の魂の象徴なのです。
ここで僕は自問自答します。果たして自分の会社には四天王が揃っているか?と。そして自分には阿修羅のような不撓不屈の精神と、同時にいろいろな仕事を進めていくだけの能力と気力が備わっているのか?と。起業家は三面六臂の彼と同じく、さまざまな顔を持ちマルチタスクで働かなくてはなりません。そして自分だけで仕事をこなしているうちは限界がすぐにやってくることを素直に認め、重要な機能を自分の代わりに司ってくれる優秀な人材を集めなければなりません。組織の大小はあれ、そのことに変わりはない、と思います。逆に言えば、会社の経営として必要な要素の絶対的責任者を、各々一人ずつ指名し、恃むことができたとしたら、かなりの確率で成功を引き寄せることができるでしょう。
実はこの一人ずつ、というのがまた重要かもしれません。AppleではDRI(directly responsible individual)といって、あらゆるタスクに対して直接責任者を一人指名する慣習があるそうです。責任者は一人でなければならない、というところがミソなんです。組織というものはすべからく制度上は責任者を持っていますが、本当の責任の所在は曖昧にしがちなのが日本の企業です。
このリボルテックの仏像シリーズは最後の一体(持国天)がまだ発売されておらず、すべて揃うのは6月になりますが、早く彼らを並べてみたいと思います。彼ら一人一人の表情や装備の違いを比べ、彼らが担う責務との関連も考えてみたい。その愉しい思考の帰結で得られるであろう何らかのエッセンスを、また僕なりの組織論に当てはめてみたいと思います。何事も勉強、どんなものからもヒントを得られる、そう思います。