自動翻訳と行政の責任

山田 肇

朝日新聞サイトに『東北博外国語HP、観光庁が一時閉鎖 誤訳相次ぎ』という記事が出ていた。東北観光博覧会の公式ホームページに外国語訳の誤りが多数見つかったため博覧会実行委事務局の観光庁が今月下旬まで一時閉鎖することを決めた、という内容である。

記事には誤訳例も付いていた。「あきた千秋公園桜まつり」が「Senshu park cherry tree Festival which we got tired of(飽きた千秋公園桜祭まつり)」と、六郷のカマクラ行事が「Mosquito event to use as a pillow of six volost(六つの郷のまくらに使う蚊の行事)」と翻訳されていたそうだ。


観光庁は「自動翻訳機の辞書機能に固有名詞を登録するなど改善を図っていきたい」と話しているそうだが、本当に自動翻訳の問題なのか。試しにGoogle翻訳を通したら「Cherry Blossom Festival in Akita Senshukoen」「Kamakura event Rokugo」と出た。一方、エキサイト翻訳では「The Chiaki park cherry tree festival which got bored」「The カマクラ event of Rokugo」となった。確かに翻訳エンジンの性能によって誤訳となる可能性があるようだ。

しかし、翻訳結果をチェックしないまま掲載していた観光庁の姿勢の方が問題だ。それにも増して、日本人向けの情報をただ翻訳すれば「それでよし」という姿勢が問題だ。外国人観光客は日本国内の地理に詳しくないから、日本人とは異なる情報を求めている。それに応えるサイトでなければ、何の役にも立たない。

利用者のことを考えてサービスを提供しなければサービスは利用されない、ということすら理解せずサイトを構築していた観光庁は無能である。東北博は大震災で落ち込んだ観光を盛り返すイベントである。その事務局として観光庁の責任は大きい。「自動翻訳機の辞書機能に固有名詞を登録する」だけでは済まない話だ。

山田肇 -東洋大学経済学部-