原発行政は既に破綻しているのでは?(続編)

山口 巌

アゴラ記事、原発行政は既に破綻しているのでは?を書いたのは3月31日である。と言っても先月ではなく、昨年の事である。当時、最大の問題と感じたのは、使用済み燃料を含む高放射能廃棄物の処理方法が何も決まっていない点である。

今回調査して愕然としたのは、未だに下記の通り高放射能廃棄物の処理を具体的のどうするか何も決まっていないという事実である。


現政府が原発の稼働継続を望むのであれば、当然の事として高放射能廃棄物の処理の方向性を示さねばならないと一年前から考えていた。言葉を変えれば、民主党、現政府はこんな大事な話をずっと放置していた訳である。

ここに来て、時の人である橋下大阪市長がTweetでこの点を厳しく追及している。

やっぱり原発問題は、使用済み核燃料の処分をどうするか。ここの真正面から答えないとダメでしょうね。今、誰も解を持っていない。いつか何とかなるで必要性で進めている。原発の是非については色んな見解がある。しかし、使用済みの燃料の処分については誰も解を持っていない。トイレのない家などあり得ない。民主党政権は、将来世代へ負担を先送りしないという理念で、政権交代選挙で消費税増税はしないと言い切った消費税を上げようとしている。それはカネの問題。使用済み核燃料の最終処分地に解を持たないまま原発を回し続けるのは将来世代へのとてつもない負担ではないのか

流石に「使用済み燃料の処分」と、「消費税増税」を同じ皿(将来世代へ負担を先送りしないという理念)に盛り付けるのは、無理筋と思うが、何分時の人の放つオーラで、一般国民の共感を得るに違いない。

橋下大阪市長の上記挑発に対し、輿石氏、維新の挑戦「受けて立つ」=民主と、早速の戦闘モード宣言である。

他人事ながら、何分我らが民主党の事である。何の理論武装も出来ず、顔面に橋下氏の強烈なパンチを浴びてノックアウトされてしまう気がする。

それでは、政府、民主党は「原発再稼働」に向け如何なる理論武装をすべきなのであろう?

奇手、妙手は存在せず、ケース毎に相対的な得失を精査し結論に至るしかないと思う。

下記は私の考えである。

ケースー1:従来路線の踏襲、詰まりは、原発に依る発電+使用済み核燃料の再処理+高速増殖炉での再生燃料(プウトニューム)による発電と、これに併行した燃料となるプウトニューム製造。

日本の原発戦略の基本は、燃料となるウランが必要量供給されるとの前提の下、先ず今回事故の福島発電所の様な原発での発電があり、次いで六ヶ所村での使用済み核燃料の再処理、最後に高速増殖炉での再生燃料(プウトニューム)による発電と、これに併行した燃料となるプウトニューム製造と言う事であった筈である。この循環により単にウランを燃やすだけの原発発電に比べ60倍の発電が可能との関係当局の説明であった。

結論:六ヶ所村再処理工場、高速増殖炉もんじゅ共に状況最悪であり、且つ前途に光明が見えない事より、この路線からは早期に撤退すべき。

ケースー2:使用済み核燃料の再処理+高速増殖炉は断念し、単純に既存原発で燃料ウランを燃焼させるに留める。

結論:当然の事ながら、この場合でも使用済み核燃料最終処理(下記チャート下段の一番右側)に就いての具体的解決策の有無が肝となる。詰まりは、解決策が提示出来ないのであれば採用出来ないプランと言う事になる。

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ケースー3:原発の再稼働を断念する。

結論:これはこれで問題山積である。先ず、原発を稼働しようがしまいが17,000トンの使用済核燃料が各原発で仮置きされている。従って、再稼働の断念は最終処理が決まっていない使用済核燃料の仮置きを無規律に増やさないと言う意味では効果があるが、問題の根本解決からは程遠い。

夏場の電力需要ピーク時に節電を強要され、熱中症で落命する犠牲者が多数出るかも知れない。

停電に依る経済損失は甚大である。

電力不足を忌避する製造業の海外逃避が加速する。当然失業者が増加する。法人税、住民税共に減る。

原発停止を補う為、化石燃料使用する発電所の稼働が必要で、必然的に電力会社は追加の燃料代を負担せねばならない。これは、最終的には需要家である企業、国民負担となる(具体的には、電力料金値上げ)。

手持ちのデーターではこれが精一杯である。当然の事ながら、ケースー3を下記項目他定量分析する必要がある。

夏場の電力需要ピーク時の需給バランス。
熱中症犠牲者の推定数。
停電に依る経済損失額。
製造業の海外逃避に依る失業者増加の推定数。それに依る法人税、住民税推定減少額。
電力料金値上げに依る、企業、家計の推定追加負担額。

結局の所は、関西電力対象地域の企業、住民が選択する話と思う。そして、正しい選択の為の客観的正当性の担保された必要情報を、政府は真摯に提供する必要があると言う事ではないか?

山口 巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役