ショートコメント:送配電は公益事業?

山田 肇

松本徹三さんの記事『電力の「グランドデザイン」の作り方』を拝見した。同意する部分が多いが、いくつか気になる点があった。

もっとも大きな疑問は「送配電は公益事業とする」という点。電力事業コストを解析した慶応義塾大学産業研究所の論文によると送配電はコストの1/3を占めるに過ぎない。発電のほうがコストに占める割合は高いのだから、そちらを自由化して競争を促進するという提案は妥当な気もする。しかし、それでスマートグリッドが進むだろうか。


スマートグリッドは発電と消費(小売)の間の情報流通によって電力の効率的利用を実現するシステムである。松本さんは小売部門がスマートグリッドを担当とおっしゃるが、送配電部門が主役ではないのだろうか。国内に張り巡らされた送配電線に平行する線を引き直すのは無駄という理由で公益事業と位置付けるのは早急すぎる。瞬間・瞬間の需給調整は最初の段階ではビル内や家庭内に閉じるだろうが、そのうち地域全体で電力利用をマネジメントするようになるだろう。それを小売部門に任せられるか、グランドデザインの課題として議論していかなくてはならない。

発電に関連して外国からの電力輸入に言及されている点も気になった。韓国は60Hz国なので西日本が輸入するのは容易だが、東日本につなぐには周波数変換が必要になる。電力輸入の前に国内での周波数統一を図るべきだ。3月7日付日本経済新聞には「経済産業省は東西日本で異なる電気の周波数を統一した場合、電力会社の設備交換だけで約10兆円のコストがかかる……現実的な選択肢とすることは困難」との記事が掲載されていた。しかし、それこそグランドデザインの課題とすべきである。

山田肇 -東洋大学経済学部-