朝日新聞に依ると、「海賊版ダウンロード罰則化、民主党が結論先送り」との事である。
文化や教育政策について党の方針を話し合う、民主党文部科学部門会議が17日あり、著作権法を修正し音楽や動画の海賊版ダウンロード(受信)に罰則を設けるかどうかを審議した。「もう少し議論を慎重にすべきだ」「罰則は行きすぎでは」などの反対意見が出て参加者の合意が得られず、党としての結論は次回以降の会議に見送られた。罰則化をめぐっては、自民、公明両党が、懲役2年以下、200万円以下の罰金を科す修正案を民主党側に打診。民主党も実務者レベルでは修正案を受け入れ、今国会への提出が閣議決定されている改正著作権法案の一部として盛り込むことで合意していた。
この判断に対しては「賢明なもの」と素直に評価したい。
断っておくが、私は昨今の有料コンテンツの無料化の流れに対しては疑問を持っている。2月のアゴラ記事で説明した通り、本来有料であるべきコンテンツを無料化してしまえば、結果クリエイターに金が回らず、この業界が「焼野原」となり、長い目で見て国民の不利益になると考えているのである。
しかしながら、「違法ダウンロード刑事罰導入」の件は、何と言っても自民、公明両党の動きが余りにも拙速であり、充分な議論がなされたとはとても思えない。
両党は、何故ここ迄立法化を急ぐのか?
そして、肝として、コンテンツの商流が従来の「パッケージ」から「ネット」に移行するという押さえるべき本質論がある。
これに就いては、昨年2月のアゴラ記事パッケージメデイアの終焉を参照する。
昨年8月の、HMV渋谷店の閉鎖は衝撃だった。CDの売り上げが右肩下がりである事は承知していたが、若者が最早CDショップに行かない、若者で賑わう渋谷の街が最早HMV渋谷店を必要としないというのは、今更ながらとはいえ考えさせられた。それ以降、映像再生のDVDはこの先どうなるんだろうという、漠然とした疑問を抱えていたのだが、今回偶然、朝山貴生氏の記事を発見し、パッケージメデイアがネットに飲み込まれていくパラダイムシフトを確信した。それにしても、3,000以上の店舗を北米に有した、レンタルチェーンのBlockbusterが、Netflixオンラインストリーミングサービスの台頭に敗北し、あっという間に倒産したのは、圧巻である。
今回の自民、公明の「ダウンロード刑事罰導入」への、つんのめりの背景にあるものは、CDの売れ行き減少に頭を抱えるレコード会社の陳情があったと推測する。
しかしながら、年間売り上げが数千億円に過ぎないレコード会社救済の為に、ネットの在り方自体を歪めると言うのは、「本末転倒」、「角を矯めて牛を殺す」との誹りを免れない。
レコード会社は、政治家にダウンロードの罰則化を依頼するのではなく、ネットの時代に適応したサービスの在り方を検討し、工夫すべきなのである。
何時まで経っても、CDを作ったり、CDを飾るCDジャケットの図柄をどうするかで社内会議をしている様では話にならないのである。
何はともあれ、今回民主党が自民、公明の求めに応じ、「ボタンの掛け違い」に走り、将来に禍根を残すと言う最悪の結論に至らなかっと事を多としたい。
山口 巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役