財政再建に必要なコミットメント - 『日本の財政をどう立て直すか』

池田 信夫

日本の財政をどう立て直すか
編者:土居丈朗
販売元:日本経済新聞出版社
(2012-02-22)
販売元:Amazon.co.jp
★★★★☆


国会では、相変わらず消費税をめぐる愚劣な駆け引きが続いている。消費税の引き上げを公約した自民党が問責決議などを乱発して国会を混乱させている状況をみるにつけ、財政とはその国の政治のレベルを反映するものだと思う。ファーガソンも指摘するように、大帝国が滅亡した原因もほとんどが財政破綻とインフレだった。

本書は日本の第一線の財政学者が、このように劣化した日本の財政をどうすれば再建できるかを政治経済学の立場から論じた論文集である。消費税の増税が必要なことは自明であり、むしろ10%ぐらいでは足りない。それと同時に社会保障の削減が必要なのに、増税が社会保障の膨張に使われる現状は、日本の民主主義の危機である。

改革のポイントとして本書が強調するのは、財政再建への政治のコミットメントである。民主党の「マニフェスト違反」が問題になっているが、選挙の公約はしょせん「不完備契約」であり、財政規律を掲げて当選しても、バラマキの誘惑から逃れられない。特に首相が毎年変わるようでは、政府が何を約束しても国民は信じないだろう。これを是正するには憲法を改正する必要があるが、法改正だけでできることもある。

井堀利宏氏や編者が提案するのは、年齢別選挙区である。また第7章で編者が書いている両院協議会の改革も注目に値する。衆参の議決が異なる場合には両院協議会で協議するが、その運営は国会法などの改正で変更できる。たとえば「予算関連法案については衆議院の決議に従う」と定めれば、憲法を改正しなくても衆議院の優越を担保できる。

ただ根本的な問題は、日本社会に遍在する「過剰なコンセンサス」だろう。大阪市の橋下市長が人気を集めているのも、「決められる政治家」を求める国民のいらだちを示している。意思決定システムとしての機能を失った国会に期待するより、内閣に権限を集中して行政主導で改革を行なうほうが現実的ではないだろうか。