電力需給見通しとグランドデザイン

山田 肇

夏に電力不足が起きるとの報道が続いている。なかでも関西電力は16.3%不足だという。元情報は、国家戦略室に設置された需給検証委員会に提出された資料にある。北海道と関西、それに九州電力は不足で、東北、東京、中部、北陸、中国、四国電力は供給に余裕がある。北海道、東北、東京電力の東三社合計では3.7%の余裕、西六社の合計では3.6%の不足で、9社トータルでは0.4%の不足だという。

2010年の猛暑を前提とした計算なのにわずかしか不足しない。それなのに「問題だ」「問題だ」と報道されているのは、余裕のある電力会社から不足する会社への融通がむずかしいからだ。4月24日付の日経新聞によれば中部電力から関西と九州電力への融通量は最大100万キロワット。4月10日の日経新聞によれば、北海道電力と東北電力の間での融通可能量は最大60万キロワットだという。


電力各社は、管内の需要は自社の発電所でまかなうように送電網を形成し、他社との融通線は極めて細い。それゆえ、トータルではわずかの不足に過ぎないのだから需給バランスを工夫したら、とは言えないのだ。

今日の東京新聞によれば、電気事業連合会は融通を担う独立組織を新設するとの方針だそうだ。融通問題を解決しようというポーズだろう。

松本徹三さんは「電力のグランドデザイン」について記事を書いたが、グランドデザインには、各社独立の送電網をか細い融通線で接続する網設計の見直しも含めるべきだ。60/50ヘルツ間の融通も現状は100万キロワットに過ぎない。これも、周波数の統一も視野に入れて見直すべきだ。融通線が細いと、東北の独立発電事業者(IPP)が関西で販売するといった地域を越えたビジネスができない。それが新規参入を阻んでいる。

山田肇 -東洋大学経済学部-