決められない政治

山口 巌

昨日の小沢議員無罪判決を受けて、日本の政治は一体どう変わって行くのであろうか?一つだけはっきりしているのは、従来の「決められない政治」が「全く何も決められない政治」に劣化して行く事であると思う。


国内の必要な改革は頓挫するであろう。外交も当然の事ながら停滞を余儀なくされる。如何なる国であろうと、自国の統治すら満足に出来ない政府との交渉等真面目に行う筈がないからである。

従って、海外との交渉に於いては、先ず国内でのグリップを強めるべきであるのだが、現政権の閣僚はどうもそうは考えていない様である。

先ずは、野田首相であるが、時事通信の伝える所では明後日から訪米との事である。

29日に訪米する野田佳彦首相とオバマ米大統領との首脳会談後に公表する共同声明に、自衛隊と米軍の連携を一層強化する「動的な日米防衛協力」を明記することが固まった。中国が海洋進出を図る南西諸島などを念頭に、日米がともに警戒監視活動に当たり、米軍や自衛隊施設の共同使用の促進なども盛り込む。首相は29日から5月2日までの日程で、ワシントンを訪問。30日(日本時間5月1日未明)に日米首脳会談に臨む。2009年9月の民主党政権発足後、首相の公式訪米は初めて。首脳会談でまとめる共同声明は、日米同盟を「アジア太平洋地域の安定と繁栄の公共財」と位置付け、同盟深化を確認。両国が協力して同地域における秩序づくりに当たる姿勢を明確にする。 

この記事から推測するに、大きなテーマは「沖縄基地問題」と「TPPへの加盟」の様である。

「沖縄基地問題」を米国と具体的に話す為には、野田首相は先ず中央政府のトップとして、沖縄をしっかりとグリップせねばならない。統治も出来ていない人間にやって来られても、オバマ大統領は迷惑なだけである。

一方、「TPPへの加盟」に就いても身内の民主党ですら統治出来ていないのではないか?

昨日のアゴラ記事、電力は「第二の米」になる で参照したが、首相の訪米に合わせて農業団体がワシントンポストに意見広告を掲載している

当然の事ながら、オバマ大統領としては、先ず国内の意見集約を先にやってくれと言う所であろう。

「勇将の下に弱卒なし」と言うのは古来有名な言葉である。今朝、世耕議員のこのブログを読み、逆も又真なりと実感した。

本当に下品で恥ずかしい、ゴールデンウイーク中の閣僚及び政務三役の外遊である。

そもそも、英語も満足に喋れない人間が外国に行った所で、コミュニケーションがとれる筈がない。海外要人との人間関係の構築等は、夢の又夢である。露骨に言ってしまえば、「金」と「時間」の浪費でしかない。

来年以降は、この手の国費を使った外遊条件として、「海外一流大学への留学経験」若しくは「3年以上の海外駐在経験」を課してはどうであろうか?

川端大臣の出張目的が「英国及び欧州委員会との閣僚級会談等のため」、古川大臣の出張目的が「IT関係者等との意見交換及びリオ+20に向けたブラジル政府との意見交換等のため」となっている。どうみても必要性がある出張とは思えない。

お二人共誰と何を意見交換されるのか?これでは、野党から批判されても止むを得ない。

さらに、参議院が問責決議案を可決した前田国交大臣がなんとドイツに出張することになっている。

こういう年代の方は、若い頃ベートーベンに夢中になったとか、トーマスマンを愛読したとか言う人が多い。大臣の肩書で訪問するかと言った所かも知れないが、「遊び」としか思えない。

外務省では大臣と全副大臣、政務官が一斉に海外に出かけることになっており、政務三役がまったく不在のタイミングが発生することになる。外交上の重大問題が発生した際にどうやって対応するのだろうか。危機管理の精神に欠けている。

最早解説不要。政務三役揃って自分達不在でも役所は機能すると思っている。

防衛省では田中大臣以外の副大臣、政務官全員が出張することになっている。安全保障上の緊急事態が発生した場合には問責が可決されている田中大臣一人が対応することになる。これも大問題だ。

我らが田中大臣が単騎、仁王立ち状態で国防に当られると。その心意気、志は多とするものの、能力は衆目の一致する所ではないか?

加えて総理以外に9名いる安全保障会議メンバーのうち、7名が不在になるタイミングも発生している。国内に残るのは田中防衛大臣(問責可決済)と藤村官房長官の2名のみ。この二人は先日の北朝鮮による弾道ミサイル発射時の情報伝達混乱の当事者だが、大丈夫なのか

口の悪い私の友人は、藤村官房長官が田中防衛大臣の事を嫌っており、携帯を着信拒否にしていたのでミサイル発射の電話が通じなかったと誠しやかに言っているが、本当なのだろうか?

仮に、今回外遊の閣僚、政務三役が全て何らかの事情で帰国しなかったら日本はどうなるのであろう?

国民は不安の余りパニックに陥り、泣き叫ぶのであろうか?

私は、国民は狂喜し、東京株式市場で日経平均は一週間程ストップ高を続けるのではと密かに思っている。

山口 巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役