派手な言い方で、電力会社に原発の安全性についての情報公開を求める人がいる。以前から疑問だったのだが、そういう人は次のいずれかではなかろうか。
A) 原発の安全性を理解していない。
B) 原発の安全性なんてどうでもよいと思っている。
C) 悪役の電力会社を攻撃することで自分の立場をよくしたい。
そう判断する理由は簡単である。電力会社が情報公開しない理由は、以下のものが考えられるからである。
1) 核不拡散のための技術の秘匿。例えば北朝鮮に原子力技術を教えないため。
2) テロ対策のため。どこを狙えばよいかテロリストに知られないように。
3) 電力会社が情報公開について深く考えていないから。
4) 電力会社が自社に都合の悪いことを隠したいから。
このように並べれば誰しも気づくと思うが、非常にテクニカルで難しい話である。実務者が細かいところを議論するような、マスコミ受けしない地道な作業が必要なのだ。無責任な立場で派手に批判するのは無害かもしれないが、責任ある立場で派手に情報公開を求めるのは百害あって一利なしである。派手に攻撃する人は(4)しか考えていないか、(4)だけを宣伝したいのだろう。
ところで私は危機管理に昔から関心があるが、所詮はアマチュアである。専門家の意見は違うかもしれない。
しかし、原子力防護専門部会の委員で対テロ専門家である青山繁晴さんが似たようなことを言っていたので紹介したい。3月、関西テレビのニュースアンカーという番組で以下のようなことがあった。
VTRは古賀茂明特別顧問と関西電力の、マスコミ取材についての派手な言い合いから始まった。その後非常用発電機を視察したとき、古賀顧問を含む一行は笑いながら、背後の崖を指してなぜこんなところにおくのかと文句を言っていた。
このVTRに対し青山さんは、関西電力の問題点を指摘する一方、テロ対策があるのだから情報公開は膝詰めできちんと話さなければいけないこと、笑いながら話したことはテロリストにここを狙ってくださいと教えているようなものだと指摘した。
つまり、私の見方はおおむね正しかったのだろう。古賀顧問は元経産官僚であり、核不拡散やテロのことを知らないはずはない。すると彼は(C)であり、悪役の電力会社を攻撃することで自分たちの立場をよくしようとしていたのだろう。
最後に番組での青山さんの発言をひとつ紹介したい。橋下市長と松井知事に別の番組でこうせまったそうである。「あなたがたはエネルギー戦略会議にダマされているのではないか」と。
神 貞介
数学者