久々の大型上場、しかも皆が使っているフェイスブックとなればお祭り好きのアメリカで盛り上がらないはずがありません。
一体、いくらで寄り付くのか、その後はどうなるのか、心理ゲームのようで実に興味深く拝見させていただきました。
公募38ドルに対して寄り付き前の気配値が45ドル辺りから徐々に降りてきて42ドル05セントで寄ったあとはあまりの大量の売買注文でコンピューターのトラブルも一部発生しました。しかしながらその盛り上がりも割とスーッと消えていき昼前に一気に38ドルちょうどの公募価格まで落としました。ここで幹事のモルガンスタンレーが必死の防戦。公募価格を1セントも下回らずにどうにか持ち直したものの3時半過ぎに再び38ドルちょうど。ここでもう一度防戦で最後の10分ぐらいでようやく一息ついたというのが一日の動きでした。
日本の報道では比較的ポジトーンですが、私は酷かった感じています。このあとも尾を引くような気がいたします。また、今日、アメリカのソーシャルメディア関連の株式がことごとく売られたのもフェイスブックへの資金のシフトだったからでしょうか?
PERが100倍(一株利益は43セント、今日の終値で88倍)ぐらいになるフェイスブックは株式の規模を考えればグーグルやアップルと比べ明らかに買われすぎで一昔前のドットコムブームのような価格だと思います。特にフェイスブックに明確な成長戦略が描かれていればよいのですが、現時点ではようやくスマホからの収益源を確保するためにM&Aをしたような状況であります。
どこかの記事にこれならグリーやDeNAのほうがまし、と書いてありましたが、RERで見れば確かに両社は8倍そこそこ。仮にコンプガチャで2~3割減収があるとしても投資済みの海外収益がほとんど決算に反映されていませんから言われるほど悪くはならないとみています。ですが、両社とも高値からは半分の水準。直近でも3割以上下落しています。バランスが悪いというのはこういうことでしょうか?
さて、ニューヨークの株式は冴えず、過去13営業日で12日間の下落。売れらすぎなのに買われないという状況の裏にはギリシャの来るべき日がいよいよProbable(ありそうな)という単語を使いたくなるような状況になってきたからでしょう。
イギリスのタイムズ紙。紙幣印刷で世界有数のDe La Rue社が旧ドラクマの印刷準備か(British banknote printers dust off drachma)とのニュースが18日付で出ていますし、欧州各方面もいよいよの日に向けた最悪シナリオ作りに動き始めた感があります。
世界の金融市場が揺れ動くのもこの問題の根源が究極的に解決しないからで案外そういう決定がなされれば市場はそれを吸収しようとするものです。
フェイスブックの株を買うためにポートフォリオの入れ替えが起きて関連銘柄が売られる状況になったというのはある意味、リスクオフのタイミングで投入資金のやりくりに追われた、とも言えるのかもしれません。
日本の株式も個人の追証発生に伴うテクニカルな売りを吸収するのに時間がかかっているように見受けられます。
これで一大イベントも終わりましたのでヨーロッパに注視しながらも市場が落ち着くのか、見定めることになりそうです。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年5月19日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。