野田総理が世界経済のブレーキ?

山口 巌

BBCが伝える所では、オバマ大統領がG8宣言として、「欧州諸国は、雇用の創造と経済成長に注力すべき」と発言したとの事である。

US President Barack Obama has said there is an “emerging consensus” that European countries must now focus on jobs and growth.

流石と言うか、何と言うか、正に時宜を得た宣言内容である。

先週のアゴラ記事、我々は世界同時不況の入り口に立っているのか?で説明した通り、マーケットデーターを読む限り、世界経済は世界同時不況の崖っぷちに立っているとしか思えない。 今回の宣言に依り、債務問題に苦しむ欧州に留まらず、世界金融市場が「明るさ」を取り戻す事になるであろう。

但し、日本市場を除いてである。

注目すべきは、従来、「緊縮財政」一本槍のドイツや、同様、「緊縮」に大きく傾いていたイギリスが同調している事である。事前に何らかの調整が行われたに違いない。

さて、一人蚊帳の外に放置されていると思われるのは、我らが野田総理である。

朝日新聞が報じる所では、「消費増税成立させたい」 野田首相、G8首脳にと、「国際協調」や「経済のグローバル化」等、自分には関係なしとの究極の「ガラパゴス発言」である。そもそも、G8は世界問題に対して主要国首脳が一堂に会し、解決策を議論する場であって、日本の国会報告会でなければ、野田総理地元支持者の勉強会でもない。

野田佳彦首相は19日午前(日本時間同日夜)、G8サミットの世界経済をめぐる協議の中で、社会保障の安定財源確保と財政健全化のため「消費増税法案を(今国会で)成立させたい」と述べた。日本政府が消費増税と社会保障の一体改革への努力を進めていると強調した。 各国の首脳に対し、増税法案成立に向けた強い決意を示したものだ。 首相は「財政健全化と経済成長を両立させるのは、どの国も直面している課題で、我が国も両方を追求してる」と説明。さらに、「今年度は2%を上回る成長を実現させたい」と述べた。

繰り返しとなるが、余りに場違いな発言と思う。G8サミット宣言の趣旨は「成長重視ありきで財政再建を図る」である。一方、野田総理は「先ず増税ありき。そのためには成長も必要」と受け取れる点である。これだと、G8サミットに出席しなかった方が却って良かったのではと思う。

更に看過出来ないのは、欧米の一糸乱れぬ動きに対して、事前調整も無ければ、、日本だけが、蚊帳の外に放置されてるのではと思われる、この様な客観的事実である。

最早、日本の政治が世界から相手にされなくなっているのではないか?

「雇用の創造」と「経済成長」は欧州だけの問題なのか? 決してそうではない筈である。日本でも同様喫緊課題である。問題が無いのではなく、野田総理や現政権閣僚に問題意識が無いだけの話である。

何故、G8宣言に追随し、「日本も欧州に協調し「雇用の創造」と「経済成長」に政策の舵を切る。その第一歩として、停止中の原発を再稼働させる」位の事が言えないのであろうか?

学生が就職出来ず、結果多くが自殺したり、不況が続いて失業者増える事に少しも興味がないのであろう。

本来、昨日のG8宣言を好感して、今朝の日経平均はストップ高でも可笑しくない筈であるが、こちらも蚊帳の外である。

仮に、本日の欧州株式市場や、ニューヨークの株式市場が、G8宣言を好感して大きく上げる様であれば、野田総理が世界経済のブレーキと言う事になる。

山口 巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役