BBCが報じる所では、20億ドルに至る巨額損失の責任を取って、JPMorgan投資部門の責任者Ina Drew氏が辞任するとの事である。
The Wall Street firm said Ina Drew, who oversaw the London-based division responsible for the trading mistake, will leave after more than 30 years.
又、併せてオバマ大統領の下記コメントも伝えている。
Following a testing week for the bank, President Barack Obama in a US TV interview took the opportunity to cite the trading loss as an example as to why he pushed laws to curb the power of big banks. “JPMorgan is one of the best managed banks there is. Jamie Dimon, the head of it, is one of the smartest bankers we got and they still lost $2bn and counting,” Mr Obama said.”It’s going to be investigated, but this is why we passed Wall Street reform.”
抄録すれば、「JPMorgan程の一流の金融機関でもかかる巨額の損失を出す訳で、従来から進めている「金融規制改革」を進めねばならない。
今後、金融機関の「自己勘定取引」に対する規制が強まるのは確実であろう。所で、気になるのは何故JPMorganが、懸る巨額の損失を出すに至ったかである。ブロゴス記事、JPMが大損した理由を考える は、下記説明している。
そして、大事なことは、次のことです。過去に機能していた戦略が効かなくなってきたということは、何か大きな変化が世の中に起こっている前触れです。時として、結果として出てくるときもあります。LTCMはアジア通貨危機とロシア財政危機の結果がLTCMの破綻でした。金融危機の時は、定量分析の著名なファンドが、軒並み大損をだして、結果的に、金融危機の予兆と言われました。今回のJPMの損失は、欧州のソブリン危機を端に発した信用市場の異変なのでしょうね。ここから、さらに、おかしなことに発展しなければいいですがね。
欧州のソブリン危機を端に発した信用市場の異変が原因とすれば、日本の金融機関も無傷では居られない。野村ホールディングはリーマンショック以降、欧州ソブリンリスクへのエクスポージャーを膨らませた事で有名であるが、株価チャートを見れば3月末以降見事な一直線の下げである。それにしても、PBRの0.5以下は異常である。背後に何かが控えていると思わざるを得ない。
ちなみに、今日のロイターは、イタリアの銀行26行を格下げ、見通しネガティブ=ムーディーズを伝えている。日本の金融機関も、イタリアの銀行程ではないにしろ、同様損失を膨らむのは確実であると思う。
[14日 ロイター] 格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは14日、イタリアの銀行26行の長期債務格付けと預金格付けを引き下げたと発表した。 引き下げ幅は1─4段階で、格付け見通しはいずれも「ネガティブ」としている。イタリアの5大銀行は大量のイタリア国債を保有しており、欧州銀行監督機構(EBA)が設定した厳しい自己資本比率規制を満たすため、6月までに150億ユーロ程度の資本増強を行うよう求められている。また5大銀行は、欧州中央銀行(ECB)のオペで得た資金を貸し出しに回すよう、政府から圧力を受けているが、景気悪化を受けて信用の質が低下している。こうしたなか、今回の格下げは大きな打撃となる。ムーディーズは声明で「イタリアの銀行の格付けは、欧州先進国で最低の水準となった。これは、イタリアの銀行が、イタリアおよび欧州での経営環境悪化の影響を受けやすいことを反映している」と説明した。格下げの理由としては、イタリア経済がリセッション(景気後退)に戻ったこと、緊縮策、問題債権の増加、市場での資金調達難を挙げた。
日経平均も野村程の急落では無いものの、見事な一直線の下げである。
飽く迄個人的な推測であるが、欧州国債と国内保有株の同時値下がりで、国内金融機関のバランスシートがかなり毀損しているのではないだろうか?勿論の事、この結果、今後「貸し渋り」や、更に重篤となれば「貸し剥がし」に一直線に進むのではと危惧する。
この結果、キャッシュフローに難のある企業の「ショック死」や「黒字倒産」が日常の風景となるのではないか?
「雇用情勢」は悪化し、学生は就職出来ず、失業者が街に溢れる。
一方、日銀の金融政策は「欧州債務問題の鎮静化」と「資源国、新興産業国の経済活性化に牽引された世界経済の緩やかな回復」をベースに立案されたと聞いている。しかしながら、実態経済は真逆なのではないだろうか?
日本政府や日銀の現状認識は楽観的過ぎるのではと、深く危惧する。
山口 巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役