顧客重視という迷走 --- 岩田 智司

アゴラ編集部

前回初投稿とさせて頂きました内容について、数名の方からコメント頂きました。この場お借りしてお礼申し上げます。諸先輩方からの意見を参照しながら、暫く続けていきたいと思いますので宜しくお願い致します。

「日本の看板」と命題にさせて頂きましたのは、どの手段が正解で、どちらの会社が勝っているとの話ではなく、日本という条件が逆に「足枷」になって、思い込みから自分達を制限してしまっているのではないか? との疑問から先の提起とさせて頂きました。今回もセオリーの一つである「顧客重視」というアプローチについて、考え直してみたい。


機能性・利便性の追求、顧客(消費者)のためとは本当に必要な事なんだろうか?

例えば、アップルという会社は顧客重視でしょうか?

私は少し違う印象を持っています。

あくまでイメージですが、商品開発の動機は「こんないい物を思いついたぜ! スゲーだろ! 持たないやつはダセーよ」

で、売る時はできる限り優しく「あなたの可能性を無限大に広げます。それがアップル。」

という感じです。

ここに顧客(消費者)の意見ってあるでしょうか?

あくまで、自分達(アップルという会社側)からの提案であって、ユーザー重視というより一方的なプレゼンに近いと思います。

実際は細かなマーケティング等ももちろん行なわれているかと思うのですが、それはあくまで自分達の商品を売るための操作手法であって、一般消費者の意見を収集した成果である製品という「媚びた感じ」はまったくない。

対抗でよくあげられるアンドロイド。

スマフォに限っていえば、iPhoneとどちらが機能としてできる事が多いといえば実はアンドロイドの方かと思う。

iPhoneと比べて洗練されてない様に見えるのも確かだが、だからといってユーザーにあわせて過度な機能を絞込みしたりはしない。
ブッ込み型端末とでも言えるでしょうか。

結果「入っていても使わなければいい」との事で選択者の幅も広がり、多くのユーザ層を手にいれているかと思う。

少しかわって日本メーカーの家電。

例えば、レンジが「チン」となって取りにいかないと、何回も呼出のため「チン」を繰り返す。

洗濯機も同様。

ポットに関しては、湧いたら訳のわからない音楽を奏でる。

製品に向かって言いたくなる。「私はもう知っているけど、取りに行かないだけなのだ」と。

きっと、これらは「物忘れ防止」等のユーザーの意見を実直に取り入れた結果なんだろうと思う。

もし、こういった事が日本メーカーから販売されるスマフォにも今後影響してくるなら、市場決定力のない状態で差別化を図ろうとし、またおかしな機能が搭載されてくる気がして仕方がない。

アップルを持ち出して語るのは、今ではもう飛び抜けていますので例外をもって全体を語る様で少し無理があるかもしれませんが、顧客重視、ユーザー目線っていったいなんだろう?と考える視点にはなるかと思いました。

消費者の意見を聞いてそれを反映した商品開発との行為は、実は競合他社への陳腐な対抗策でしかなく、かつ性別・年齢層等のユーザーをピンポイントに絞り込みすぎる結果になるため、逆に市場を小さくしてしまっているんではないかと感じる。

そういった市場ではもう儲けることは難しいのだから、顧客意見無視の、圧倒的な価値観で押し付けがましい魅力ある日本メーカーの製品に逢いたいと、そう思う今日この頃です。

岩田 智司
神戸大学 専門職大学院 聴講生