「日本」という看板 --- 岩田 智司

アゴラ編集部

某テレビ番組で日本国外での企業イメージ調査が行われ、サムスンはどこの国の会社か? との問いに「韓国」と即答する事が多かったが、パナソニックの場合は「アジアのどこかの会社」と答えたそうである。

この結果について、一般的には「日本のブランド力が足りない」「技術力が一流である事が説明できていない」「日本企業はグローバルに展開できていない」などの悲観的な意見が多数をしめ、番組もその意向を加味しての製作だったと思うのですが、見方をかえてはどうでしょうか。


私は逆に、パナソニックはグローバル戦略に成功し始めていると考えています。

昨今、「グローバル」との条件下で企業競争を語る場合、日本企業としてのイメージアップや日本の技術を売り込む事が大前提になってしまっている事が多い様に思います。

そもそもグローバル展開を目的とする企業に「日本の○○」との前提は必要でしょうか?

世界中で商売を行うとの条件下で企業が利益・成果を結果として求めるなら、その手段として国や人種を限定してから取り組むのは戦略の視点からしても 失敗ではないかと思う。

加え、イメージ・ブランド戦略として「クールジャパン」や「サムライブルー」等の日本であるとのイメージを先行させる事があるが、これらは日本人による日本人向けのキャッチコピーであって、国外向けではまったく使えない。

商品の購入者・消費者側からしても、その商品の背景(技術力やその生産背景)は購入の際の情報としてはカウントされにくくなっている。

購入した製品がたまたま「○○製」であっただけの話であり、日本製を好むのはもっぱら日本人自身が多いように思う。

だとすれば、先の番組からの調査結果でサムスンがグローバル競争下での成功例としてみるならば、韓国「の」サムスンではなく、サムスン「は」韓国だったであるからで、国のイメージよりも会社・ブランドイメージが優っているという事実を表している。

そう考えると、パナソニックが国の看板を降ろしてもイメージされていると言う事は、グローバル化の手始めとしては成功し始めていると言ってもいいのではないでしょうか。

戦後、早くから海外に出向き、グローバル競争に挑んだ先駆者達が必要とした事は「日本である」が第一ではなく、商品そのもの自体の魅力がありきで、あくまで日本という看板はその方々の誇りだけであって、メイドインジャパンの信用はその後の成果から付いてきた結果にすぎなかったはずである。

グローバル展開を目的とする国内の製造企業は過去の栄光を横に置き、今一度、自分達の製品の魅力を国の看板をはずした所で再検証し、グローバルに挑む時期ではないかと思います。

岩田 智司
神戸大学 専門職大学院 聴講生