成長する民主党政権

小幡 績

朝、歩いていたら自民党のポスターが眼に入った。曰く、

約束したことをやらず、約束しないことをやる民主党

なるほど、上手いことを言うな、と思った。

そう。だからこそ、私は、民主党を見直したい。

なぜなら、これは民主党の成長を示しているからである。


民主党の最大の欠点は何か。

ポピュリズムを実践していないことにある。

ポピュリズムとは、もちろんネガティブな言葉であるが、それは大衆の易きに流れる風潮に迎合する政治を、大所高所から、長期的な社会の未来を見据えて、エリートやリーダーが望ましい方向へ社会を導く政治と比較した場合の話である。

民主党の欠点は、支持率を意識しすぎるほどしながら、国民に嫌われる行動をあえてとることにある。

税と社会保障の一体改革が混乱したのは、実現不可能な最低保障年金に固執したことにある。また、バラマキというレッテルが固定したのは、子ども手当にこだわったことにある。それらはマニフェストで約束したものであるから、簡単に落とすわけにはいかない、ということからきている。

原発事故対応の失敗も、危機に直面しても、脱官僚にこだわったことにある。これは、個人的な問題もあるが、同時に、民主党全体に広がる、自分はインテリで、政策は自分で考え、自分が実現する、ということに対するこだわりがありすぎることが背景にある。

民主党の最大の欠点は、官僚も民間ブレーンも使わず、すべて僕らが自分で考えたこと、自分の思いを政策として実現するのが政治家であり、それがカッコいい、と勘違いしていることにある。

政治とは、半分はポピュリズムだ。ポピュリズムを超えられる政治ができる政治家は限られている。それは個人の資質もあるが、現在のような、政治家に対する蔑視が広がっている社会ではあり得ない。そうなると相対的に効率的なのは、余計なコストをかけずに効率よくポピュリズムを実践することである。

つまり、予算を使わず、減税もせず、外交も壊さず、それで人気を取る行動をすることが最も効率的であり、優れた政治家であることになる。

それが小泉であり、橋下なのだ。

民主党は、ばらまいて予算を破綻させても、人気が落ちる。これは最悪だ。

橋下が小泉や石原よりも優れているのは、北朝鮮や中国を使わず、国民感情が将来の外交の選択肢を狭めるリスクを冒さずに(北朝鮮は拉致問題というカードをあえて北朝鮮に与えた、尖閣を買うということは、日本が中国に対して領有権の争いがあると言うことを認めた、そうなると国際社会では争いのある地域ということになってしまう)、統治機構の改革という意味不明の実体のないヴィジョンと、大阪府構想という、実体にはほとんど影響を与えない政策で、人気を集めている点である。

したがって、民主党がマニフェストにこだわらず、過去にどう言っていようが、変化する経済、国際情勢に対応して、その時々でベストの政策(実体経済的にもポピュリズム的にも)を採ろうとすることは、民主党の大きな進歩であり、ようやく大人への階段を上り始めたといえるのである。

だから、私はこれからの民主党にボトムアウトの可能性があることを期待する。