学研『科学』の復活と再販制度

山田 肇

子供の頃、学研の『科学』という雑誌を定期購読していた記憶がある。休刊が続いていたが、その『科学』が7月に復活するそうだ。5月31日の朝日新聞が報じている

記事を読んで疑問がわいた。「教材(科学実験キット)をメーンにして付属の冊子と一緒に販売する」「書籍として復活する」という点だ。実験キットがメーンで「書籍」と言えるのか。ブランドのマーク入り買い物バッグを付録にした「雑誌」が流行しているが、それと同様の脱法行為ではないか。著作物は独占禁止法の適用から除外され「定価」販売が許されている。これを再販制度と呼ぶ。実験キットがメーンでも書籍で、買い物バッグがメーンでも雑誌だとして、「定価」販売が許されてよいものだろうか。


公正取引委員会、消費者庁、雑誌公正取引協議会などに電話をかけて事情を聞いた。冊子(印刷物)がメーンでなければ再販対象ではないということがわかった。『科学』は復活するが、記事の通り実験キットがメーンならば、それは再販対象の書籍ではないのだ。

雑誌の場合、付録の価値(製造原価+流通マージン)は200円以下でなければならない。買い物バッグは200円以下なので再販対象の雑誌として「定価」販売できる。美顔ローラは200円以上なので、出版社から出てはいるが再販対象の雑誌ではない。対象商品と非対象商品とのセット販売では、セット商品について、販売店が自ら販売価格を決定できる。学研の『光る人体骨格模型キット』は価格1575円だが、アマゾンが1254円で販売しているのは、そのためだ。

注意深く見ると、学研のサイトには「定価」と表示された商品と「価格」と表示された商品が並んでいる。たとえば『大人の科学』シリーズは価格表示だ。復活する『科学』も価格表示で販売されることになるだろう。子供たちが科学に憧れを抱くのに役立つことを期待する。それにしても著作物再販制度とはややこしいものだ。

山田肇 -東洋大学経済学部-