朝日新聞が伝える所では、防衛相に民間から森本氏との事である。
野田佳彦首相は4日の内閣改造で、参院で問責決議を受けた田中直紀防衛相の後任に元防衛相補佐官の森本敏・拓殖大大学院教授(安全保障論)を起用することを決めた。防衛担当閣僚に民間人が就任するのは防衛庁時代も含め初めて。
政府、与党のやる事にいちゃもんを付けるのが唯一の仕事である野党は、これから、「民間人で務まるのか?」とか、或いは、「民主党は他に人はおらんのか?」とか当分五月蠅く言って来ると思う。
しかしながら、民間人で務まるのか?の質問に対しては、政治家で務まるのか?と答えておけば良い。民主党は他に人はおらんのか?に対しては、おればこの3年間これ程苦労する事は無かったと答えれば良い。国民が森本新大臣に期待する事は、「正しい判断」と「決めた事の着実な実行」に尽きる。
森本新大臣のキャリアパスで興味を引かれるのは、「現職自衛官」から「外務官僚」という、ハードパワーの中核を成す軍の現場指揮官から、同じくソフトパワーを代表する外交に転じらた点である。現在の日本が最も必要とする人材に違いない。
日本は戦後の長い間、「経済は一流」、「政治は三流」と強い経済に胡坐をかき、国家の生命線である、「安全保障」と「外交」をアメリカに丸投げしても何とかやって来れた。しかしながら、こんな幸せな夢の様な時代は終わってしまったのである。
これからの日本は、「軍事」と「外交」の最適化、詰まりは最も効率の良い組み合わせを考え、同盟国であるアメリカと擦り合わせの上、前に進めて行かねばならないのである。勿論、目的とするのは「国益」の最大化である。
全くの偶然であるが、一昨日のアゴラ記事、平和の代償と配当で伝えたかったのはこの事である。露骨に言ってしまえば、日本は成長が約束されたアジア太平洋地域に対し、「軍事」、「外交」でコミットし、成長と言う果実の分け前にありつかねばならない。これに失敗すれば、中国はおろか、中国に雁行する新興産業国の追い上げに合い、その中で埋没してしまう。
森本新大臣のカウンターパートとなる、米、レオン・E・パネッタ国防長官も前職はCIA長官とこの分野のプロ中のプロである。
レオン・エドワード・パネッタは2011年7月1日、第23代国防長官に宣誓就任した。国防長官就任前の2009年2月から11年6月まで、中央情報局(CIA)長官として同局を率いると同時に諸情報機関のために、人的情報 や公開された情報を収集するプログラムの責任者を努めた。パネッタ長官は人生の大半を公務にささげてきた。CIA入局前の10年間は、カリフォルニア州立大学モントレー・ベイ校のレオン&シルビア・パネ ッタ公共政策研究所で、妻シルビアと共同所長を務めた。同研究所は超党派、非営利のセンターとして若者に公務の意義と価値を教えることを目的 としている。2006年3月には、イラク戦争に対する独立した評価のために、連邦議会の要請を受けて設置された超党派委員会であるイラク研究グル ープのメンバーに選ばれた。1994年7月から97年1月まで、ビル・クリントン大統領の首席補佐官。
そもそも、安全保障と言う高度に専門的な分野で、ずぶの素人が防衛相に就任して来た日本の政治システムが余りに異常であり、お粗末であったと理解すべきと思う。
その意味、今回の森本新大臣誕生の意味する所は大きい。何故なら、それなりの地位に就く為には、「知識」、「見識」、「実績」、「能力」が必要であるという当たり前の事を、改めて国民に示したからである。
森本新大臣の今後に心から期待したい。就いては、沖縄基地移転の如き内政問題で立ち往生し、実力が発揮出来ないと言った事が無い様、野田総理の目配りと支援を期待する。
山口 巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役