昨年12月に復活したエコカー補助金もあり国内自動車販売は好調な結果を維持し、7ヶ月連続で前年同月比を上回っているそうです(個人的には昨年度の数字は特殊だけに比較してはいけないと思いますが)。そのために約3000億円の補助金は夏には予算を使い尽くし終了となる可能性が高くなりました。
私は今年の1月にこのブログでこの補助金は本当に必要か、と問いました。新しい技術で誰でも欲しいと思う環境に優しい車を買うと10万円割引してくれるのですから売れるのは当たり前です。結果として予算計上したときに見込んでいた「品切れ」が2ヶ月早くやってきてしまいました。
日経新聞によれば補助金が枯渇したあと、顧客にどう対応するのか、という質問に対して自動車販売会社は実質同額かそれに近い額を値引きという形で提供することになりそうだとのことです。
アメリカでは2008年の金融ショック、更にはGM,クライスラーの倒産で考えられないほど自動車の売れ行きは落ち込みました。今でもよく覚えていますが、2008年のクリスマスセールの時、バンクーバーではアメ車の新車がTwo for One(一台分の値段で二台買える)で売られていたのです。そして年間の販売台数は2007年ごろまでに1500万台以上維持していたものが2009年には1000万台強にまで下落しました。
ですが、消費者は生活必需品である車を何時までも買い換えないわけにはいきません。つまり、潜在需要を先送りしているだけだということです。実際、2012年のアメリカ自動車販売は絶好調で5月はやや落ち込んだものの年間を通じて1400万台まで回復する可能性が高いのです。
さて日本においては乗用車の平均使用年数は12年近くまで延びているところに2011年は震災があり、買い控え等が生じて特殊要因で一時的に平均使用年数は更に延びたと考えられます。そこに本来なくなったはずのエコカー補助金が再び復活し、トヨタからはアクアという買い求めやすい価格帯のハイブリッドが出たのですからその反動が一気に出たということはいえるでしょう。
更に、東北地方では震災の結果としてキャッシュリッチになっている層があり、ブランド品やパッケージの海外旅行が飛ぶように売れている中である意味生活必需品の自動車ですからこれは売れるのが当たり前であります。
ではこの補助金で得したのは誰なのかといえば値引きが享受できた消費者なのですが、この景気の折に新車を買える人だけが割引をもらえるという奇妙な「不公平感」が漂っていたような気もいたします。更に自動車会社は販売の勢いの腰を折らないために上述のように補助金にマッチするような値引きをしなくてはいけない羽目になるわけです。
今回の補助金は自動車業界からの強い圧力のもと実現したとされておりますが、業界の補助金頼みの体質が癖になりかねない状況にあるのです。
いわゆる補助金終了後の反動で痛い目にあったのがテレビの補助金でした。結局補助金は需要の先食いであって需要を作り出すわけではないと思いますので中期的に見た総需要は変化しないのではないでしょうか?
とすればアメリカのように消費者がその消費する体力回復を受けて2009年を底にジワリと自動車販売が回復してきている姿のほうが需要と供給という点では健全なのかもしれません。
個人的にはエコカー補助金より必要で為になる補助金が求められる産業や業種は他にあるのではないかと思いますがどうもこういうものは政治力がものをいうのでしょうか。あまり素直にいただけません。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年6月6日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。