朝日新聞が伝える所では、大学1・2年生に内々定 ユニクロ、約10人にとの話である。
ユニクロは昨年末から学年にこだわらない採用を始めている。これまでに大学1、2年生約1千人から応募があり、インターンシップや面接をへて、約10人を選んだ。大学卒業後に入社する予定だ。柳井社長は「大学が休みの時に店舗で仕事を経験し、卒業と同時に店長になることを目指してほしい」と話した。
大学関係者は、今回ユニクロが採用したこの新しい採用システムをどの様に理解しているのであろう? ユニクロと言う企業の極めてユニークで限定的な話と理解していたとするならば、余りにも楽観的だと思う。
日本企業は確かに変化を開始するのは遅い。しかしながら、一旦始まれば後は一瀉千里である。あっと言う間に多くの企業に広まるに違いない。
特筆すべきの第一は、矢張り、大学で殆ど何も学んでいない新入生に内定が出たと言う事実である。
露骨に言ってしまえば、ユニクロとしては大学教育の価値等これっぽっちも認めていない。入学した大学名と、学生の人柄を含めた、所謂、人物本位、「人間力」を評価したと言う事であろう。
学生に求める学生生活の中身も実に簡単明瞭である。「卒業と同時に店長になることを目指してほしい」。この柳井社長の一言に尽きる。今後、アルバイトを通じ必要な経験を積むと共に、店長や先輩社員から多くを学ぶ事になる。
更には、海外展開を加速するユニクロであれば、英語が堪能で海外店店長も即戦力として可能と言う事であれば、更に善しである。入学した大学に「留学制度」がある場合は、ユニクロと相談して一年程度留学するのも良いであろう。留学先は何も英米とは限らない。ユニクロが今後の重点市場と目している国であれば何処でも構わない。
ここまで考えると、この新入生やユニクロに取って大学とは一体何だ? と言う話になる。仮に一年目は国内のユニクロ店舗でアルバイトをし、店舗の運営を学ぶ。二年目はユニクロに取っての戦略市場である国の大学に留学する。
帰国して卒業までの二年間を無駄に過ごすよりは、大学を中退しその国の店舗に勤務した方が、本人のキャリアパスとしては遥かに効率的で、自然ではないか? こういった素朴な疑問が湧いてくる訳である。
そもそも、高校生が何故四年にも及ぶ貴重な時間と、安からぬ入学金、授業料を支払って迄大学に行くかと言えば、「卒業証書」が貰え、これが海外旅行に於ける「パスポート」の如く、「大卒」としての「職」を得る為に必要であったからである。
しかしながら、大学や大卒生を取り巻く環境はすっかり様変わりである。以前のアゴラ記事、大学に設置されたハローワークは結果「ブラック企業」への就職斡旋所になるのでは? で説明した通り、大学の「卒業証書」は最早東大の如きエリート校を例外にすれば「紙屑」に過ぎない。
大学を卒業すると言う事は、高額な学費を溝に捨て、四年間を無駄に過ごすと言う事に他ならないのである。
そして、最後のケツ持ちは「ハローワーク」でのブラック企業の斡旋である。大学に取って体裁の良い就職率を叩きだす為、卒業生はとんでもない企業に嵌め込まれるに違いない。「失業」の「飛ばし」と言っても良いだろう。
「何をしたら良いか判らないので、取敢えず大学に来ました」と言う大学生が許容された幸せな時代は、どうも過ぎ去った様である。
山口 巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役