牛丼業界が苦戦しているそうです。日経新聞によると「牛丼大手3社の売り上げが落ち込んでいる。最大手ゼンショーホールディングス(HD)の「すき家」の5月の既存店売上高は約9年ぶりの減少幅となり、残り2社も前年を割り込んだ」とあります。
売り上げの推移表を見ると一目瞭然なのですが、下落タイミングはすきや、松屋、吉野家それぞれ若干違いますが、おおむね2010年後半から明らかな下向きトレンドとなっています。このころは牛丼各社が値下げ戦争をしていた時で私の2011年1月11日ブログでは「ばかげた価格戦争であり、経済付加価値がつかない」と斬っています。それから1年半後、残念ながらその通りになりつつあるわけです。
ラーメンは牛丼の3倍の金額なのに行列を作る店が絶えないのはご当地ラーメンをはじめ、店ごとに工夫をして消費者をうならせる努力をし続けているのです。日本人は新しいもの好きで新製品がでると飛びつきやすい傾向があります。その中で牛丼三社が提供できるメニューには限界があるのも事実です。なぜなら「早い安い」がとりえであり、その早さを秒単位で競うこの業種において手のこったものを作ることを自らギブアップしているとも言えるのです。
以前、すきやが牛丼提供において三社の中で圧倒的な早さを示した記事がありました。私は当時すきやで問題になっていた夜中の一人シフトに於けるセキュリティ問題を自分の目で確認することも含め夜中のすきやに行き、どれぐらい早くサービスされるのかチェックしに行きました。結果として客が次々に押し寄せサービスに5分ぐらいかかったのですが、その際思ったことは人の忍耐できる時間許容範囲はどれぐらいか、という疑問です。
フランス料理ならなぜ2時間でも問題ないのに立ち食いそばなら1分以内なのか、と考えればある程度の答えは見えてきます。フランス料理店では時間を買うのです。店の雰囲気、グラスに注がれるワインの音を愉しむのです。一方、駅の立ち食いそばは究極のオープンキッチンです。それは注文すると店のおばさんが即座にその注文のそばを作り始めるという小気味よいリズムなのです。その一連の流れは30秒かもしれないし1分かもしれませんが作業が続いていることで客は一定の満足があり、苦情は出ません。
牛丼各店がスピード競争をしたいのなら私は讃岐うどんチェーンの方式がもっとも満足されるスタイルだと思います。行列はサービスを受けるまでの待ち時間。しかし、自分の順番になれば自分の注文のためにすべてが進むというわけです。
混んでいるラーメン屋で注文した際、自分の注文の麺が即座にゆで始められるかというのは大きな関心です。バンクーバーのあるラーメン店は混みすぎていて自分の注文の麺が3順目になったことがあります。うんざりです。
一方、私の経営するカフェでは客の注文が入ればそれまで違う作業をしていた人でもすぐさま客の注文に答えるようになっています。それはお客が代金を払うのはお客が店からのすぐさまの対応への期待だからです。
「早い」という意味が「店が客にどれだけ早くアテンションするか」ということではないかと考えれば牛丼三社が同じスタイルで体力競争をし続けているしがらみから誰が抜け出すのか、私は興味津々見続けています。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年6月10日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。