テレビで在中国日本国大使館に勤めるエリート外交官の仕事ぶりを紹介していました。番組は人気職種という内容でしたのでなるほど、こう見せると格好いいな、と思わせる内容でした。
外交官といえば外務省が思い浮かびますが、在外公館に勤務する外交官は必ずしも外務省出身者ばかりではありません。その国や地域との関係を考え、経済産業省や農水、警察などさまざまな出身部署から構成されています。その業務は官官レベルの話から民と官、更には地域日本人との関係まで広範囲に及びます。
外交官といえばいつもパーティーをしているように思われます。確かにそういう地域の大使館、領事館もあろうかと思いますが、必ずしも毎日ではなく、また、全員がいつもパーティーに出席しているわけではないのです。
そのパーティーでもさまざまな情報を収集し、他国の動向を探ったりするため、楽しいパーティーではなく仕事モードいっぱいになります。テレビでも紹介しておりましたが、やり取りをメモに残しながら、という技は会議でもない限りできませんから、頭に叩き込み、トイレ等でさっとメモるということになります。
さて、日本の外交はどうなのでしょうか。うまくいって当たり前の外交ですからむしろ失敗したり失言するとそれが目に付くわけです。例えば最近、東京都の尖閣の買取の動きに関して丹羽宇一郎駐中国大使が「日中問題に重大な危機をもたらす」と発言したことに対して石原都知事をはじめ、野党などから突き上げがあり、更迭コールすら出てきています。
丹羽大使は伊藤忠出身の民間大使。起用した理由は財界をはじめ広く顔が利くことでした。そういう意味では経済面重視で政治色をやや薄め、二国間関係を「ことなかれ」的に進めるというスタイルではないかと思います。しかし、外交というのは二国間関係を踏まえ、双方の短期、中期、長期の関係を前提に交渉力を駆使することであります。当然ながら経済面はそのひとつの顔でしかないのです。その点を踏まえれば丹羽大使の発言は日本の大使として日本の利益を代表しておらず不謹慎と言われても仕方がないでしょう。
むしろ、丹羽大使のように長く中国でビジネスをしていた人はトップに据えるべきではないと思います。
外交問題としてもうひとつ身近なのが北方領土問題。プーチン大統領がその再交渉の糸口を見せたことでにわかに動きが出てきそうな気配です。プーチン大統領が在任中に何らかの動きが出る可能性はあります。私はそのトリガーはロシア経済にかかってくると思います。資源価格が下落しロシア株式が低迷すればプーチンを口説く方策が見えてくるかもしれません。なぜなら堅固な経済基盤と個人資産の獲得が私のみるプーチンの素顔だからです。
一方、佐藤優氏は氏の著書で外務省内のロシアスクールとアメリカスクールの温度差を指摘しています。これは面白い側面だと思います。もしもアメリカスクールがこの領土問題に何らかの関与を示しているならばそれは外務省の縦割り専門主義の弊害であるといえましょう。
外交官は入省してからは専門領域を作ります。ロシア、アメリカ、中国、欧州、中東…といった具合です。バックグラウンドとして高い専門的知識を持つ故に省内での力関係が出てしまうのは当然のことなのです。この辺が日本の外交でスマッシュヒットが出てこない理由のひとつかもしれませんね。
テレビで見る外交官は格好いいのですが、実情はなかなか苦労の連続だと思います。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年6月12日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。